2020年1月8日~24日にかけて実施した、獣医師を対象とした数値規制に関するアンケート調査の結果がまとまりましたので、公開させていただきます。

獣医師を対象とした、数値規制に関するアンケート調査報告 -動物福祉と事業経営を両立するための提言を合わせて-

奥田順之1)(Yoriyuki OKUDA)
1)特定非営利活動法人 人と動物の共生センター(Human Animal Symbiosis Center)

概要

本調査は、動物愛護管理法改正に伴う、犬猫の飼養管理に関する具体的な数値基準を検討するための材料として、獣医師から、犬のケージ(寝床)の広さについての法規制に関する意見と、数値規制に関する総合的な意見を集めて公表することを目的に実施した調査である。

一般に調達が容易な複数のサイズのケージの中にモデル犬を収容し、立位および座位にて写真を撮影した。それぞれのケージの広さについて、写真とケージの縦横高さのそれぞれの長さの情報を元に、法規制をすべきか許容すべきかについて質問を行った。ケージの使用方法は、寝床として使用する場合とし、日中にケージから出し適切な運動・活動の時間を設けるという飼養条件とした。

ケージの広さに関する意見に合わせて、動物愛護管理法改正、数値規制、および、本アンケート調査に関連した意見について、自由回答にて回答を依頼した。

有効回答数325件のうち、97.5%(317件)が動物病院(犬猫)の所属者であった。出身大学は偏りなく分布していた。最も小さいケージ①では74.8%(243件)が規制すべきと回答し、以降、ケージ②は25.8%(84件)、ケージ③は6.8%(22件)、ケージ④は3.1%(11件)がそれぞれ規制すべきと回答した。天井のないサークル⑤は10.5%(34件)が規制すべきとの回答であった。

自由回答の意見は88件の回答があった。類似の回答を分類したところ、「ケージの広さだけでなく総合的な判断(運動・活動の時間、人員数、温度や湿度などの環境条件など)が必要」との意見が31.8%(28件)で、最も多くの回答が分類された。また、「あくまでも寝床としての使用し十分に運動・活動させることを前提として回答した」という前提条件の確認に関する意見が8.0%(7件)の回答で見られた。「ケージを使用する状況が不明確なため、アンケートの設計に問題がある」とする意見も8.0%(7件)の回答で見られた。

これらの回答から、ケージの広さについては、あくまでも適切な運動・活動の時間を設け使用した場合に限った場合に、②ケージ~③ケージ程度以上の広さを法的に許容するという意見が、中心的な意見であったと考えられた。また、実際の規制を検討する際には、ケージの広さのみに注目するのではなく、運動・活動の時間や、温度・湿度・照度・臭気等の環境条件を含めた、総合的な基準を検討すべきであると考えられた。

今後、数値規制に関する審議が進んでいく中で、ケージの広さ以外に、活動量、人員1人あたりの飼育頭数、繁殖回数などの具体的数値が検討されることになっていくだろう。具体的な規制の結論の如何に関わらず、ペット関連事業者は社会的責任として動物福祉を向上していかなければならない。しかしながら、現状、動物福祉の向上には人員や設備などの資源が必要なため、実際の現場では、「事業にとって余計な負担」と捉えられることもあるだろう。しかし、本来、動物福祉の向上は、繁殖率の改善や、社会性の向上など、生体販売という業態の生産性・事業効率の向上につながる。さらに、動物福祉に対する世論が盛り上がりを見せる中、動物福祉に配慮した事業を行っていることが、企業のブランド向上に繋がり、利益を向上させることにもなるだろう。数値規制を機会と捉え、ペット産業全体で、生体販売における動物福祉向上のためのイノベーションを興していくことが、ペット産業のより良い発展につながっていくと考えられる。

 

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