■対話のための「白書」
本書は、犬猫と人間社会の間に発生した諸課題を分析することを通じて、生体販売を中心としたペット産業の社会的責任(CSR)を、具体的な手段とともに提案しています。その魅力は、冷静で科学的な課題解決へのアプローチ方法といえるでしょう。著者の奥田さんは東海若手起業塾の4期・5期で学び、また、その後もソーシャルビジネスの領域からのアプローチとして、社会的課題の解決の手法を研究されてきています。その具体的な実践の形が白書の中に表されています。

白書の中で説明されている通り、ペット産業の市場規模は1兆円程度で、年1%前後で拡大している産業。生体販売事業(ブリーダー・ペットオークション・ペットショップ)はその10%未満ですが、他事業からの依存度が高い「バリューチェーンの起点」と位置付けられています。一方で余剰犬の発生や、飼育環境で動物福祉が十分に保証されていないなど、課題が集中している事業領域でもあります。ペット産業のCSRを推進していく上で、生体販売を中心とした飼育水準の向上・販売形態の進化と、バリューチェーン全体での意識向上や協力体制の構築が、車の両輪のような役割を果たしていくという視点、これは多くの人が共感するところではないでしょうか。

その実現には、飼い主を含む様々な関係者同士の対話が不可欠です。あとがきでも、本書に対する意見は賛否両論ともに公開すると述べていますが、ここから始まるコミュニケーションこそが、CSRを推進していく原動力になると思います。ぜひ多くの方に、人と動物の共生のための対話に参加していただきたいと思います。

小池達也 東海若手起業塾事務局長

東京農工大学院を卒業後、環境系コンサルタントとして勤務。地域を持続可能にマネジメントする市民社会を作りたいという想いから、国際協力NGOやESDファシリテータ育成講座での活動を経て、2015年より東海若手起業塾の事務局スタッフ。2018年より同塾の事務局長を務める。