6月9日に開催した、ペット産業の社会的責任を考えるシンポジウム-対話から始めるペット産業のCSR-のレポートを公開いたします。前編は、冒頭あいさつ・基調講演・報告部分のレポート記事です。

基調講演② 特定非営利活動法人人と動物の共生センター 理事長 奥田順之 発表資料
報告① 一般社団法人ペットパーク流通協会 会長 上原勝三氏 発表資料
報告② 株式会社シロップ CEO 大久保泰介氏 発表資料
報告③ 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 主任研究員 武井泉氏 発表資料

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 主任研究員 武井泉氏 挨拶

MURCでは、2013年からソーシャルビジネス支援(プロボノ)の活動が開始され、NPOや財団など、社会的課題に取り組む組織への支援を行う制度が始まりました。今回共催のNPO法人「人と動物の共生センター」さんとのプロボノ活動は、2016年から始まり、私を含め弊社8名の研究員が約2年間、ペット産業のCSRの推進を目的に、文献調査、ヒアリング調査、統計などを使った推計などをともに行ってまいりました。その成果は今回発売された『ペット産業CSR白書』として取りまとめられました。今回、奥田さんから白書の報告もありますが、この報告を基に、専門家の皆様、会場の皆様と、ペット産業のCSR・動物福祉を推進していくためにどうしたらいいのかということを対話していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

特定非営利活動法人人と動物の共生センター 理事長 奥田順之 挨拶

動物愛護管理法改正に向けて議論が進む中、非常に多くの皆様にご興味をもって参加いただき、感謝いたします。本日ご登壇いただく皆様、主催のMURC様に深く感謝申し上げます。
本シンポジウムは、タイトル―対話から始める、ペット産業のCSR―にもございます通り、対話を大切にしたいと考えています。社会的責任、CSRとは、企業と社会の持続可能性を高めることを目的にしています。企業運営を改善し、持続可能にするものであって、廃業を求めることではありません。動物のためにという声はすごく多く、ペットショップ反対という声は大きいわけですが、それだけでは、ペット産業の改善につながらないのではないのではないかと思います。批判しあうのではなく、改善の提案をして、対話をしていきたいと考えています。今日の場が、ペット産業の改革を後押しし、新たな価値を生み出すきっかけになれば幸いです。

ペッツファースト株式会社 荒井敏夫氏 よりコメント

本シンポジウムに当初登壇予定であったペッツファースト株式会社様より、メッセージを頂戴してご紹介しました。

弊社ペッツファーストは全国約90店舗でペットショップを運営しており、
“Pets Always Come Fitst”を企業理念に掲げ、子犬、子猫のことを最優先に考え、
安心してお客様にお迎えいただける営業を心がけております。
またCSR活動においてもペット最優先を理念とし、
マイクロチップ普及活動・保護犬譲渡活動・アニマルセラピー活動・聴導犬育成支援活動などに取り組んでまいりました。
本日は参加できず大変残念でございますが、本シンポジウムが更なる業界発展に結びつくことを心より願っております。

ペッツファースト株式会社 開発部部長 荒井敏夫(あらいとしお)様よりメッセージお預かりいたしました。

IIHOE人と組織と地球のための国際研究所 代表者 川北秀人氏 基調講演①

よろしくお願いします。市民活動団体の運営のお手伝いや、企業の社会責任(CSR)へのお取り組みのお手伝いをさせていただいています。資生堂では動物実験廃止に向けた円卓会議のお手伝いもさせてもらいました。

結論を先に言いますと、企業は動物福祉の向上に取り組むしかありません。

ポイントは3つ。①国内市場は縮小するので、グローバル企業にとっては市場拡大は海外売上の拡大しかない、②欧米の動物福祉の関心の高さから制度化はさらに進むと見込まれる、③東京オリパラは「持続可能な調達」を公約として選ばれている、という3点です。「できるといいね」という水準ではなく、やることが前提であるということを、しっかり再認識していただきたい。

CSRは社会貢献ではなく、社会責任です。欧州委員会は、「責任ある行動がビジネスの持続的な成功をもたらすとの観点から、企業が事業活動やステークホルダーとの交流の中に、自主的に社会や環境への配慮を組み込むこと」と定義しています。

日本人も日本企業も、自分たちが置かれた状況がどう変わってきているかを正確に知っておかなければなりません。かつて世界の経済大国だった日本も、1995年には世界第3位だった1人あたりGDPが、2015年には20位になっています。これを伸ばすためには、女性の就業率をさらに上げていくしかない。女性の就業率の改善は、権利の問題ではなく、人とインフラ・ハコモノの「2つの高齢化」の中で、社会の持続可能性を考えれば、必要不可欠であり、できないと社会も組織ももたないから、やらねばならないことなのです。

人間の高齢化も、第2幕に入りました。日本は今まで65歳から74歳までの前期高齢者が増える時代でしたが、85歳以上(注:4人に1人「要介護3」以上)が2035年までに1,000万人を超え、総人口に占める割合も11人に1人に達します。これまでとは桁違いの高齢化社会になってくると、ペットも大事だけれど、ペットを飼う人の状況が変わってくることにも対応する必要がある。世帯当たり人口も2035年には2.26人まで下がると見込まれる。高齢者が飼っていたペットが、飼えなくなってしまう問題も増えるでしょう。ペットの存在感が高まってくると同時に、ペットをどう飼い続けるかまで踏み込んで考えなければならない社会になってきています。

この2年間くらいで、「社会責任ちゃんとやらなきゃ」という流れも強まっています。昨今の景況に比べて株価が高くなっている理由の一つは、年金積立金管理運用独法(GPIF)が株を買っているからです。GPIFは保有株の5%程度を、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点で買うようになりました。最近、特に伸びている国内投資信託の会社は、ESG投資を独自に丁寧にやっています。海外の投資機関も、そういう投資ができる日本国内企業を通じて国内株を買っている。

企業にとってこれまで、責任は「守らされること」でしたが、今では、競争に勝ちながら、環境や従業員に対する負荷も減らすという位置付けになっています。社会の状況が変わったら、事業の在り方を変えていかなければ儲け続けられないことを、グローバル企業の経営者は理解して実践しています。事業を通じて、課題解決も価値創出もしていこうという時代です。

日本のペット産業が、社会にとって、なにがしかグレーな部分や、心の底からは応援されない状況にある産業から、「あの業界があるから日本が豊かになり、動物の福祉が向上した」という産業になることが期待されている。法律を守るだけでなく、法律を超えた価値を創り出していかなければならないわけです。

動物福祉が世界や日本国内でどこまで来ているかについて、素人ながらまとめてみました。私が1990年代の半ばに有機農業の国際規格づくりに関与していたIFOAM(国際有機農業運動連盟)では、80年代から有機畜産規格に動物福祉が入っていました。また、実にさまざまな海外の企業が、動物福祉の基準を導入し実践しています。動物福祉は、すでに取引の基本的なスタンダードになっています。

ちょうど今、国連広報センターのFBページのトップは、「やめよう!プラスチック汚染」です。国連事務総長は、「プラスチック産業が悪いのではない、プラスチックの使い方・処理の仕方を間違っている人間に問題がある」と言っています。日本では考えられないかもしれないけれども、ヨーロッパだけでなく、アジアも動き出している。これが「動物福祉!」って言い始めたら、日本のペット産業はどうしますか?言われてからやるのではなく、言われる前にやったほうが、かっこいいでしょ?

CSRには守りと攻めがあります。守りはリスク管理、攻めはステークホルダー満足。動物に対して、動物福祉の5つの自由を確保することを考えた時に重要な視点は、義務を課される前に、自主基準を作って実践できるかどうかです。そのとき大切なのは、厳しさよりも、透明性の高さ。業界の自主認証でいいので、どこまでできているかをちゃんと報告していくことです。

売上5兆円の自動車部品メーカーが、「交通事故0」を目指すと言い始めた(https://www.denso.com/jp/ja/about-us/philosophy-and-vision/long-term-policy/)。交通事故は世界全体の若い世代の死因上位だが、車が悪いんじゃない。車を運転している人間と、その人たちが置かれている環境に問題がある。だから交通事故を防ぎ死亡者を減らすには、車を減らすのではなく、信号を設置するとか、ヘルメットをかぶるとか、ありとあらゆる方法を動員して、自動車関連産業として「安心」を届ける。

ペット産業も同じ。ペット産業が悪いんじゃない。現在の日本のペット産業の仕事の進め方や、情報開示の仕組みに問題がある。やめろと言っているのではなく、どうすれば動物福祉を保証しながら続けられるのかを、自分たちの問題としてとらえていただきたい。その実現に向けた取り組みを、互いに褒めあえる関係を、NGOや市民や行政とともに作っていただきたい。

ご清聴ありがとうございました。

特定非営利活動法人人と動物の共生センター 理事長 奥田順之 基調講演②

白書の中身を話しながら、CSRの話をペット産業に落とし込むとどうなのかという話をしていきたいと思います。

CSR考えるときに産業が置かれた状況を把握することは大切です。ペット産業の特性は何か?
1点目は、扱う商品が成長する生命だという点です。畜産もその点は同じで、動物福祉を最低限守っていかないといけない。そしてペットの場合は、個性もまちまちですし、飼い主が飼い始めてから成長しますから、取扱説明書を渡したらそれで終わりということではない。
2点目は、動物愛護管理法です。5年ごとに議員立法で変わりますから、急激な制度変更も十分にあり得ます。
3点目は、草の根の動物愛護団体が多く、継続的に業界の批判が寄せられていることがあります。
4点目は、殺処分・飼育放棄ですが、これは、産業公害と似ていて、ペット産業から発生する外部不経済であると言えます。
5点目は、生体販売に課題が集中しているように見えるものの、動物病院やフードメーカーなど、生体販売に直接関与していない業種も、バリューチェーンを共有しており、課題の当事者であるという点が挙げられます。

この中で、1点目に挙げた、動物福祉の5つの自由を守るという部分は、大前提となる部分です。そして、川北さんの基調講演で指摘いただいているように、ペット産業は、「本当に動物福祉が保証されているのか?」という疑問に答える責任があります。

ただ、動物福祉やっていかないといけないのはわかるけど、動物福祉きちんとやろうとすると人件費・コストがかかります。「コストをかけて動物福祉を守ることが、本当に利益につながるのか」というのは、企業が意思決定を行う上で重要な疑問だと思います。

この疑問に対する答えとして白書の中でも紹介していますが、ペットショップに対してネガティブなイメージを持っている人は、ペットショップの利用意向が下がるというデータが出ています。

今回ショッピングセンターで、ちょうどペットショップのターゲットになるようなファミリー層に対して、アンケート取っています。その結果、50%の人はペットショップから迎えたいと言っています。その理由としては、身近で信頼できるということが多かったです。逆に14%の人は、ペットショップから迎えたくないと答えています。ペットショップを利用する人のうち、動物福祉や社会的責任を考慮してショップを選んだ人は、2割程度です。

ペットショップを利用しない14%は生体販売の市場ではないかもしれない。ただ、これが増えてしまうと、ペットショップを利用する50%に対して影響していくでしょう。14%が20%になれば、ペットショップを利用する50%はそれに合わせて減少するでしょう。果たして、この14%が増えていくのかどうかというところが問題です。不買運動などが今以上に注目されれば、そうなるかもしれない。動物愛護管理法も議員立法ですから、一度話題になってしまったら、どのように規制が変更されるかわかりません。

そうした観点から、動物福祉に対して対策をしていくのは、コストというよりも、将来の事業を持続的に営むための投資であると言えるでしょう。

また、ペット産業の従事者は、社会的責任についてどう思っているのかにつてもアンケート調査をしています。詳しくは、白書に記載されておりますが、ペット産業従事者の方に対して、犬猫の生体販売をよりよくしていくために必要な取り組みは何ですか?と自由回答でお伺いしました。その結果、飼い主教育を挙げる方が一番多かった。上位には飼い主向けのアフターフォローや販売方法の改善などが入り、同時に、繁殖用犬猫の飼育/管理、子犬子猫の育成と健康管理など、犬猫の管理方法に関する項目も入りました。一部のペット産業従事者は、自身の属する業界に対して、健全な課題感を持っています。そして、ペット産業十従事者自身が感じている課題の分類は、ペット産業が解決を急ぐべき課題の具体的なチェックリストとして活用していけるのではないかと思います。

最後にペット産業が今何に取り組んでいくべきかというお話ですが、1点目に「動物福祉は本当に保証されているのか?」という疑問に丁寧に答えていくということが挙げられます。取り組みが完ぺきではなくとも現状をお話していく、対話していくということが透明性を高めると考えられます。
2点目に「社会市場の変化を先取りした投資」ということです。これから必要とされる動物福祉ですが、まだ消費者も十分に教育されていません。逆にペット産業から動物福祉について消費者を教育していくことで、それを価値に変えていくという投資も必要と思われます。動物福祉に配慮していることが、消費者から選ばれる理由になっていくような市場を、企業が自ら作っていくべきです。
3点目に「具体的な動物福祉・飼い主教育への取り組み」です。これは直接的な取り組みを如何に進めていくかというところです。繁殖に関する自主基準の策定や、バリューチェーン横断的な連携を持った飼い主教育や飼えなくなった時の支援がこれに当たるでしょう。

是非、白書の方にも提言をまとめておりますので、確認していただければと思います。以上で終わります。

一般社団法人ペットパーク流通協会 会長 上原勝三氏

色々な愛護団体や、行政からの指摘も厳しい中ですが、自分たちの取り組み・目指すものをまとめてまいりました。

皆さんにも再三再四指摘されるところでもありますが、私たちが考えている課題の1つ目は、繁殖の問題です。専門的な知識がないのに登録のみで繁殖業やペットショップを始められてしまうため、誤った知識で繁殖をされていることもあります。私たちは、今この繁殖の質の問題に、一番に取り組んでいます。

繁殖の質を上げる上では、ブリーダーの皆さんに知識を持ってもらうことが大切です。そのために、製薬会社や保険会社フード、会社から講習会を月に2回・3回とやらせてもらっています。こうした講習会をパーク内で行っているのですが、最初は聞く人も少なかったのですが、繁殖の質が上がれば、安心して買ってもらえて販売価格も上がるということがだんだんわかってもらえるようになって、今では、講習会をしっかり聞いてくれるブリーダーも増えています。

もう一点は、繁殖者が病気で倒れた時などに、残された犬をどうするかという問題です。実際に倒れられた方のところに支援に行くこともあります。自分の病気や家族の病気で世話ができない状態になっていますから、行政の職員さんがその現場を見て「ブリーダーけしからん!」となることも当然の状態でした。そこで、ブリーダーさんが事故や病気になった時に急場をしのぐために一時的に保護できるシェルターを作って対応しています。緊急時以外の引き受けも含めて、これまでに8000頭を保護して、動物愛護団体や業界団体と連携して譲渡してきました。現在管理しているのは400頭ほどです。

社会貢献としては、熊本地震などの危急時の支援を行っています。

今の課題は、流通に乗れない犬猫たちをどうするかという問題です。ペットショップに卸すための検査基準が年々厳しくなっていますから、販売に適さない犬猫の比率は増えています。それをどうにかしなければならないのです。先天性疾患のある犬猫を治療して譲渡するために、大学の先生と協力して一般社団法人を作って治療を行い、動物愛護団体さんに協力してもらって、譲渡を進めています。

動物愛護団体の皆さんとの関係についてですが、これまでに、動物愛護団体に資金援助のために寄付したり、シェルター作って寄付したりしましたが、そうするとその愛護団体が業者よりだ、業者の下請けだって叩かれてしまうことがありました。そこで、直接支援するのではなくて、大学の先生と協力して一般社団法人を作ってそこを介して、先天性疾患等の手術の支援をしたり、動物病院と協力して不妊去勢手術の支援体制をつくったりしています。

最後に、先天性疾患についてですけど、遺伝性疾患は検査で防ぐことができますので、検査可能な重要な遺伝性疾患については、それを少なくするためにブリーダーさんたちに検査をさせる取り組みをしています。

このような取り組みですが、理解されない面もあるかもしれませんが、ご理解いただければ幸いです。ご清聴ありがとうございました。

株式会社シロップ CEO 大久保泰介氏

弊社はインターネットを通じて、ペットライフを豊かにしていきたいという目的で事業を営んでいます。弊社のミッションは、人が動物と共に生きる社会を作るというものです。現在ペットを迎えるところからペットを育てるところまでペットライフをトータルでサポートする事業を展開しておりまして、一つがペットのオンラインマッチングサービスOMUSUBI、もう一つがペットライフメディアのペトことです。

もともと3年前に起業したのですが、愛犬のコルクとの出会いがきっかけになりました。コルクは足が内股いうだけで流通から漏れてしまった。こういった難しい産業の中で、これを解決できないかと考えて、起業しました。

ビジョンとしては、インターネットの力で、飼い主がペットと適切に出会う窓口を作り、正しい知識知識を元に適切に育てるというところを考えています。

ペット産業の課題として私が考えているものとしては、ペットを迎えて育てる中で多くのミスマッチが起こっているというところです。情報や商品は非常に多くありますが、うちの犬、うちの猫にあった商品サービスになかなか出会えない。出会いの面でいえば、自分のライフスタイルに合った犬や猫に出会えていないこともあります。これに対して私共は、ペットと飼い主さんに対してオーダーメイドの情報・商品・サービスを提供することで、ペットと飼い主さんのQOLを向上していきたいと考えています。

OMUSUBIはシンプルな仕組みになっておりまして、保護団体さんが募集をして、飼いたい人が応募をするという形でマッチングをしております。仲介手数料はいただくことはなく、現在、広告収入のみで運営しております。売りとしては3つです。1点目は、募集する団体さんはすべて審査制とさせていただいており、安心してご利用いただける点です。2点目は、応募から譲渡までのフォローアップにおける信頼性です。3点目は、応募者だけでなく応援する人も含めたコミュニティを作ることでマッチングを増やしていこうという点です。

まだまだ先の話になりますが、今後の展開としては、保護犬猫のマッチングにとどまるだけでなく、犬猫と飼い主さんのマッチングの健全化にも取り組んでいきたいと考えております。直近の展開としては募集する犬猫の情報をクラウドで管理できるようにしていきたいということ、動画による紹介を行いリアル店舗に負けない紹介をしていきたいということ、応募者情報に基づいたレコメンドマッチング、そして飼う前にしっかり犬猫について理解していただくための飼い主検定です。今まで気づかなかった相性の良いマッチングをデータを用いて生み出すことで幸せなペットライフの始まりをサポートしていきたいと考えています。

続いて、ペットを育てる窓口ペトことですが、私たちの強みは2点ありまして、1つ目は専門性です。獣医師の中でも専門科を持つ専門性の高い獣医師に執筆を依頼し、現在90名の専門家に執筆いただいています。2つ目は飼い主視点という部分です。記事を読んで飼い主さんが理解しやすく、その後の行動や購入につながりやすいような記事を発信しています。

今後に関しては、飼い主さまと犬猫個別に最適な情報や商品を提案していくパーソナライズレコメンドの展開を予定しています。データを入れておくだけで、犬や猫が年齢や健康状態の変化と共に最適な情報や商品を提供することで、今までできなかった犬猫一匹一匹に最適な健康管理を提案できると思っております。

OMUSUBIで出会い、ペトことで育てることで、ペットライフをデザインします。私たちのミッションである「飼い主とペットの幸せな思い出を最大化する」を軸に新しい事業を立ち上げていきたいと考えています。その中でキーワードに掲げているのが健康です。

一つは、関節疾患を専門にした獣医さんに監修いただいたサプリメントがあります。もう一つは、鼻紋を活用した個体識別システムの開発があります。将来的には、鼻紋だけでデータ管理できて、動物病院の受付ができるようになるかもしれません。

最後に、弊社が考えるペット産業の課題ですが、ペットは言葉を発することができませんので、倫理観と向き合いながら進めていく必要があると思います。殺処分、展示規制、生体販売禁止、いろいろなワードがSNSに出ますけれども、犬や猫をブリーディングする人がいなくなってしまったら、犬猫を迎えたい人が迎えられなくなってしまいます。そうするとペット産業そのものがつぶれていくことになります。ペット産業を健全化するためには、収益が必要です。収益によって雇用が生まれ、労働環境が改善し、それが健全化につながります。きちんと時代に合った運営をしていかなければなりません。

犬や猫の管理者は飼い主です。飼い主が適切な情報を持ち、適切に管理できなければ、犬猫は幸せに暮らすことができません。飼い主に理解しやすく、使いやすいサービスを提供していく必要があります。

そして、本当に犬猫のためになることなのかどうかという視点も大切です。かわいい犬猫の動画は目を引くものがありますが、それは本当に犬猫にとっては必要なのかなと思うことろがあります。大型犬と赤ちゃんが戯れている動画はかわいいですが、一方で事故も起こっている。メディアとしてその情報の裏にあるメッセージまで含めて伝えていく必要があると思います。

ご清聴ありがとうございました。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 主任研究員 武井泉氏

私のプレゼンを始める前に、少し自己紹介と、今回この4名の方になぜご登壇して頂いたかについて、ご説明が足りなかったと思いますので、補足させていただきます。

私はもともと猫が大好きで、小さいころからたくさんの猫を飼ってきました。他方、職業としては、研究員として様々な海外の社会制度や産業政策を、文献調査をしたり、海外調査のヒアリング調査をしたりして調べていくという活動をしています。そのため、何かを主張する際には、基本的に様々な角度からのエビデンス(証拠)、統計データ、過去の文献調査などを積み上げて、主張していくべきだと考えています。ですが、動物愛護の分野では、そういったエビデンスやデータに基づく議論が非常に少ないと感じていました。もちろん命に関わるテーマなので感情的な議論になりやすい分野であることは理解しています。逆にそうした議論が少ないのであれば、私の本業の強みを生かして、エビデンスベースで動物愛護や福祉政策を提言していくことができるのではないかと考えました。そういった問題意識から、2015年からネコノミスト(猫好き+エコノミストを掛けた造語です)として、フェリシモ猫部でのブログ執筆などの活動をさせていただいています。

ペットショップはいらない、ブリーダーはいらないという主張があります。これは、命をお金でやり取りすることへの嫌悪感かもしれません。ですが、白書でも執筆していますが、今日本国内で流通している犬猫の数を推計してみたところ、現在殺処分されている保護犬や猫の数を合計しても、取引されている流通量に満たないという結果が出ました。ペットショップやブリーダーさんがいなくなったら、必要とされている犬猫の数は足りなくなるということです(NPO等で一時預かりされている犬猫の数は統計データがないため上記の推計には含んでいません)。経済学の観点から、供給量が足りなくなれば、必然的に価格が高騰することになり、犬や猫を飼いたいと思った人々が、高くて買えないという状況が生まれることが想定されます。ペットショップの是非を、こうしたデータを確認せずに頭ごなしに主張することは危険だと思います。今回、白書では文献調査やデータなど客観的な情報を適切に把握した上で、ペット産業にCSRの視点を入れることの重要性を示しています。

今回は、ペット産業の生体販売の代表として上原さんにお越しいただいたり、そもそもCSRって何だっけというところで川北さんにお越しいただき、保護犬猫支援とマネタイズを両立させていらっしゃる大久保さんにお越しいただいて、各分野からバランスよく登壇者としてお越しいただきました。私たちはシンクタンクとして、動物福祉の分野にどのような団体・ステークホルダーがいるのか、それぞれどのような主張をしているのかを客観的に整理してお伝えするということが役割だと思っています。

よく、「日本の動物福祉の制度は欧米に劣っている」という話が聞かれますが、昨年度自治体さんの動物福祉の取り組みも調べてみましたが、皆さん限られた資源で一生懸命取り組んでおられると感じています。また、ネットでの情報が氾濫していて、ユーザー側がその情報を鵜のみにして、原典に当たっていないということが少なくなりません。例えば、「日本だけが世界で生体販売を許可している国だ」などという情報もその一つで、これは正しくありません。昨年英米独への現地調査も行いましたが、政府レベルでの法律で、生体販売を禁止している国はありません(自治体レベルは除く)。ドイツでも生体販売をしているところはありますが、ティアハイム(保護動物のシェルター)が各地にたくさんあり、動物を飼いたい時にペットショップに行くよりもティアハイムから譲り受けることが一般的になっているため、瀬ペットショップがないように見えるだけだと思います。他方で、ドイツやイギリスの繁殖や飼育の適正数値基準はとても明確に決められています。インターネットに載っている二次・三次情報ではなく、ネットですぐに各国の法律の原典を見られる時代ですので、できるだけそういった原典を見て判断・発信する必要があります。

頭ごなしに生体販売を禁止するということよりも、現実的なのは、販売は認めるが、繁殖の年齢、回数、インターバル等のルールをしっかり決めたガイダンスを作って、ブリーダーさんや繁殖業者さんにそれを守ってもらう、という方針を示すことだと思います。欧州の場合は、販売するなら販売するなりのルールを守りましょうということがしっかりしています。

今回の時間では、イントロで終わってしまいましたが、詳しい情報は後程センターさんのウェブサイトで掲載される資料でご確認ください。ご清聴ありがとうございました。