奥田)まずは会場から頂いたご質問について。基本的なところで8週齢問題について、どう考えているんですか?というご質問について上原さんにお答えいただきたい。

上原)獣医学的に8週齢というのは本当に正しいかというところが疑問。ジェームス・サーペル先生が来日した時に、自分ではないが別の者に質問してもらった。今の日本のワクチネーションの状況などを考えるとなるべく早いほうが、7週くらいの方がいいのではないかという話だった。
母犬にワクチンを打つという習慣が今まであまりなかったが、ブリーダーさんも徹底してきているから、ジステンパーはほとんどなくなってきている。ワクチンの問題は進展してきていると言える。
業界団体としても8週齢を推進してもいいけれども、実際は、それをすることで、母子免疫の関係(7週に比べて8週の方が移行抗体が少なくなるため)から、むしろ感染症を拡大させる可能性がある。健康状態があるから、決まった日齢で必ずワクチンを打てるわけでもない。週齢で判断するのは乱暴極まりない。教科書通りにいつ接種するとかではなく、個体の健康状態を見て判断するというのなら、是非8週齢取り入れましょうということになる。
しかし、今の議論は、ただ8週齢ということにこだわっているだけで、生体の管理という面で妥当な理由なしに8週齢という議論になっている。なぜ8週齢なのか、その意味を明確にする議論ができていない。

奥田)捕捉しますと、環境省の調査では、7週と8週で、問題行動に関連する気質の差は1%くらいで、大きな差とはいえないという結果だった。7週か8週かという議論が注目されているが、7週以前の生育環境、つまり、胎生期環境や、新生子期、移行期、社会化期前期にブリーダーが手をかけているか、劣悪な環境になっていないかという部分の方が、動物の気質や生涯の福祉に与える影響は大きいだろうと、私は考えている。

奥田)CSRを推進していく上で、現状と成果をはかる指標は?会場からも質問があったが、事前に別の企業さんからもいただいている質問。

川北)CSRへの取り組みにも経費はかかる。「何のためにコストをかけるのか」という話は必ず出る。環境負荷削減は、エネルギーコスト減になる。短期的にも中期的にも企業財務にとってプラスになる。短期的には若干コストかかるかもしれないが、省エネなら中期的にメリットが出せる。これは違和感のない議論になってきた。
CSRへの取り組みにかけるコストは何のためかというと、先ほども述べたとおり大きく分けて2つある。1つはリスクを回避するための予防的コスト、もう一つはステークホルダー満足向上のための投資。社会貢献活動も、企業への評価を高めるためのPRとしての投資と言える。
1つめの予防的コストについては、相手に与えるダメージを金銭換算できれば、俎上に載せやすい。交通安全を例にすると、ある日突然、「国家としてこんなに交通死亡事故が起こるのはおかしい」と行政が判断して規制された場合にどうするか。そういうことに備えて、予防的にコストを負担していくという考え方。リスクマネジメントであり、ペナルティを避けるためのものでもある。従業員対象のコンプライアンス研修もこれに当たる。
2つめのステークホルダー満足を高める投資、たとえば社会貢献活動というPR。顧客が同業のA社・B社・C社のうちどれを選ぼうかと考えたときに、「どうせならこの会社選ぼう」といってもらうための積極的な投資。社会貢献は、社内で指標を設定するしかない。私どもがお手伝いし、社会貢献の指標設定で「先進的」と言われるようになった企業では、社内指標と社外指標を設定した。社外指標とは、その活動が何人にどんな効果をもたらしたかという社会的インパクト。社内指標は、活動がメディア紹介されることによる広告換算効果(行数や秒数で換算して広告料いくらと同じか?)、同業者のレベルに比べて高い水準にあるのかどうか。日常の営業活動をやるより、社会貢献をやったほうが、営業上メリットがあることもある。他社よりも目立てと指示している企業もある。
CSRには、リスク・マネジメント=コスト削減につながる面もあるし、社会に対する投資=価値を生み出す他社との競争という面もある。

奥田)ペット産業はコスト削減の面が大きい?

川北)ペット産業の場合、8週齢もそうだが、取り組むことによるコスト増という部分もまだ多い。リスクを避けるという面もあるが、今までやってこなかったことをニュースに載せられるという面の方が強いのではないか?

奥田)ペット産業として正直ニュースに載せたいと思うか?むしろニュースになることで叩かれる側面もあると思うが。

上原)今までは閉鎖的、マスコミも受けません、という状況だった。私が会長になってから、NHKにも出たし、韓国の同業者が勉強にも来たし、日本テレビも来た。どんどん見せて、どんな意見があるか聞いた。
今、流通に乗れない犬猫ことが問題視されている。昔に比べて今は、流通過程で品質管理をとても厳しくやっている。飼い主に適切な犬猫を届けるために、買い手であるペットショップの判断基準は厳しくなっている。だからこそペットショップで販売できないと判断されるペットもたくさんいる。
両親のトレーサビリティの問題も指摘されて、母犬父犬の写真を示すなど、今はシステム上できるようになった。しかし、ペットショップが今やっていないのは、全頭は開示できない状態だから、一部だけ開示することができていない。我々もここを変えていき、買ってくれた方が安心して迎えられるように情報開示しなければならないと思う。
先日、獣医さんと話していたが、膝蓋骨脱臼の研究をしようという話だった。パーク全体で7000頭/週出るわけだから、自分たちの中で、データベースでフィルタかければ、瞬時に色々なデータがわかる。病気に関してもかなりの情報が蓄積されている。
こうした蓄積の中で、自主規制をやらなくてはいけないという話を川北さんに出してもらったが、業界のことはやはり業界の中の人間でないとわからないので、今我々で取り組んでいる。そこで、今、ブリーダーの自己採点のリストを作っている。ブリーダーがわかりやすく使えて、自己採点でき、ここが欠落して、ここを改善しよう、ということが分かるようにする手助けをやっている。
ペットボックス(オークションの出荷の際に使う、段ボールの白い箱)に入れるのがかわいそうという指摘ももらったが、使い捨てで清潔であり感染症の予防ができ、移動のときに暗く落ち着いた環境を提供でき、最適と考えている。また、ペットボックスの売り上げは愛護団体に寄付していて、手術代や、シェルターを作ったり、設備を買うための費用に充てている。広報することに後ろ向きなことはなく、その中で何か指摘されれば指摘された部分に対して、常に対応していこうと思っている。

奥田)今の話は、ペトことで伝えられる?ペットオークションの現状、マイナス面だけでなく、頑張っている部分もあるということ。しかし、そうした発信はもしかしたらペトことさんのイメージを下げる可能性もある。ペトことは、動物愛護のディープな情報を求めている層ではなく、もっとフラットな一般飼い主層が顧客層と思うが、ペトことのようなメディアがこうした事実を伝えるべき?

大久保)殺処分関連なども扱ったことはあるが、受け手の受け取り方次第で、間違った情報が広まることがある。メディアとしては、ブランドの軸をもって発信するかどうかを取捨選択していくことが大切と考えている。

奥田)仮に、オークションの話を武井さんが書いたら、掲載OK?世間から受け入れられにくいと感じる?

大久保)ソースがしっかりしていても、ブラックボックスには変わりない。様々な研究にしても、その研究をやった際のサンプル数や、生データを判断した人は誰かという問題が付きまわる。現状、受け手が認識して、自分の価値観にする、というところまでいけないのではと思うので、伝えるところは伝えて、議論の余地がある部分はちょっと待つことは必要かと思っている。

川北)「一般の人」という人はいない。読者のリテラシーに3段階あるとすると、上の人は特定のメディアに頼らず自ら情報収集して判断できる。真ん中の人は、自分の好きなものは理解できるかもしれない。下の人は、見もしていないかもしれない。
メディアの方たちにお願いしているのは、見てない人を振り向かせてほしいとまでは言わないので、見てくださっている人たちのために、(浅くではなく)問題についての情報を積み上げていく、ということをぜひお願いしたい。
IIHOEや私個人のFBやBlogは、過去の情報を消していない。理解してもらうためには、積み重ねが不可欠だからだ。市民がある日突然変わる、ということはない。間口はタレントの発言でも、学者の論文でもいい。専門メディアの役割は、特定の分野の問題についてコミュニケーションを積み上げて、理解を進めてほしい。

上原)メディアの人に言いたいのは、「8週齢ありき」とか「国で日本が一番悪いとか」そういう書き方・発信の仕方はよくないのではないかということ。韓国にもオークションはあるし、アメリカのオークションは一般人参加が可能、一番の買主は愛護団体だったりする。アメリカでは3州が8週齢販売をやっている。州法でやっていて国としてやっているわけではない。業界団体基準でやっているところが多い。
獣医師会が1年前に発表した他国との比較(日本獣医師会雑誌:2017年5号)だと、日本は厳しいなという印象を持った。でも、それはマスコミには掲載されない。愛護団体も、そうした客観的な情報に基づいているわけではなく、間違えた情報の中で、判断してしまっている部分があるのではないかと思う。8週齢の話も客観的な情報に基づかないと話し合いがしにくいと感じる。

奥田)つまり、エビデンスベースになっていないという話だと思う。そういった、客観的な情報・エビデンスに基づく情報って、簡単に手に入るもの?

武井)インターネットで探すと出てきたりするが、出典が書かれていないものも多い。ネット情報はコピー&ペーストでどんどん広がっていき、勝手に都合のいい部分だけコピーされてまとめサイト化され、それがまた拡散してしまう。時に間違った情報も広まってしまう。
例えば、イギリスの飼育数値基準などは、イギリスの政府のウェブサイトを確認すれば英語で掲載されている。英語ができないという人も、現在のGoogle翻訳は、英語やヨーロッパ言語であればかなり翻訳精度が高まっているので、きちんと検索すれば内容を調べられる。でもほとんどの人はそこまでやらない。我々シンクタンクは、政策文書や統計データを使って難しい報告書、分厚い報告書を書くことがすばらしいというような傾向もあるが、他方で、ある分野のことを知らない人にも普通の人もわかりやすい資料・報告書を書く努力も必要。

奥田)エビデンスベースでない、感情論になっていることや、コピーペーストで広まっていることはこの業界の特性でもある。その中心には、動物愛護の気持ちを強く持った方がいて、懸念を表明することは大切な一方、エビデンスベースでないと業界も対話しにくいという面があるのではないかと。
そこで質問したいのが、ステークホルダー・エンゲージメントについて。ペット産業も動物愛護団体も、「人と動物が共生する社会」というビジョンは共有できると思う。しかし、共生を目指す道筋が違っていて、ペット産業は「人が動物と幸せになれる社会」を目指していると思う。そして動物愛護団体は「動物の権利が侵害されない社会」を目指していると思う。
違うことを見ているのだけれど、どう対話していくべきか?

川北)企業側が、どれくらい腹が据わっているかにもよる。例えば、原生林を切ってゴム林を作ってきたりだとか、自然を壊して石油を掘ってきたといった問題もある。保護団体から不買運動を起こされているケースもある。動物福祉も、臨界点の一歩手前だと認識してほしい。東京オリパラはそのきっかけの一つになる。
ある日、不買運動や法的規制といった事業の根幹を揺るがす事象が来る。それに主体的に臨むのか、あるいは受け身で待つのか。その対応は、同業界の中でも企業によって分かれる。

エンゲージメントとは、「婚約」という意味でも使われる言葉だが、ステークホルダー・エンゲージメントとは、多様な主体(ステークホルダー)である相手を巻き込み、力を借りること。そのためには、相手のことをしっかり理解する必要がある。NPO/NGOは企業のことを、企業はNPO/NGOのことを理解しないと、お互いにエンゲージメントできない。
私たちは、企業の社会責任への取り組みの適正性を確認するために、現地調査もさせてもらっている。企業が今どこまでできているのかをきちんと理解して、NPO/NGO側として企業に次のステップを提示する必要がある。
0か100でいうと、100できていないと許せないという価値観もわかるが、しかしそれだけではテーブルの反対側に座るだけで終わってしまう。いきなり100を求めるのではなく、今できる部分を伸ばしましょう、と提案していくことが大切。
つまりNPO/NGOにとって、企業がポジティブな変化を起こせるような、合理的な提案が求められる。重ねてNPO/NGOにお願いしたいのは、企業を理解すること。具体的には、各社が、何がどこまでできていて、どこからできていないのか、といったことを、異動を繰り返す各社の担当者よりも理解できていれば、リスペクトされるだろう。この丁寧さが欲しい。そういった理解をもとに、これだけのコスト、これだけの工数をかければ、これだけのことができると伝えてほしい。
有機農業分野のお手伝いをしていたころ、消費者に店頭でアンケートすると、葉を切って洗ってある大根と、泥つき・葉つきの大根だったら、「泥付きがいい」という回答が多い。でも売れるのは、葉を切って洗ってある大根。消費者は嘘つきでもあり、それを企業もNPO/NGOも共通の理解としておかなければならない。消費者の本音と建て前の間のぎりぎりのところで、企業とNPO/NGOが協働できる重なり合いを作っていけるかどうかが勝負になる。企業も「このコストは負担するから、市民側もこのコストは一緒に負担できないか」という提案を繰り返せるかどうか。
先ほどのプラスティックの例でいえば、レジ袋の有料化・京都のイオンで20年近く前に取り組んでもらった。レジ袋有料化だけで何年間も対話している。たった1日のテストで3年間の議論が必要だった。同社としては「レジ袋を有料にしたら買いに来なくなるのでは」と思っていた。ところが、やってみたら、ポイントカードを作る人が増えた。こういう行動の積み重ねが必要だ。
NPO/NGOは企業を理解し、企業も市民と一緒に何ができるのかを、しっかり試してほしい。

奥田)上原さんは愛護団体とも連携しているが、直接的な資金提供などは問題になるという話もあったが。

上原)愛護団体、日本中で1000くらいいる。それぞれ考え方も違うので、どこかに何かをやると、他から言われることは少なくない。業者の下請けといわれることもある。そこで大学や獣医師らと一緒に一般社団法人を作って、そこを介して支援を行っている。
自分たちでも直接的に譲渡の活動をやってみているが、うちはお金がいらないから、トリマーやワクチン、不妊去勢手術も、狂犬病も、ワクチンもやれる。すべて済んだ状態の犬猫を無料で出すことができる。普通は3万~5万はかかる。ウチがこれをやってしまうと、今まで活動を重ねてきた愛護団体の活動を横取りすることになって、愛護団体の活動を無下にしてしまうことになると思っている。

川北)3万円徴収して、基金にすれば?

上原)愛護団体は自分の人生かけている人もいる。身を削ってやっている。直接お金を渡して経費にしてほしいという気持ちもあるが、それができない。業界団体は絞ればお金いっぱいあるから、自分たちでやろうと思えば結構できる。でもそれをやったら、自分の資産を使ってやってきた愛護団体に失礼だと思っている。その人たちの活動を支援する、という流れにしたい。同じようなマネをしてはいけない。
ペットショップでローンを組んで買う人よりも、保護犬を飼いたいという人のほうが資金的に豊かで、保護犬を迎えることが一種のステータスになっている。データを取ってみても、軽い先天性障害なら、ほぼ100%引き取ってもらえている。売れないペットも、1週間以内に里親はほとんど見つかる。

奥田)保護団体の今までやってきた活動をリスペクトするというのは一つのポイント。川北さんが言っていた基金とは、そうした方への支援のこと?

川北)そう。プールしてしまえばいい。

奥田)であるならば、支援していることもオープンにするべきでは。

川北)アメリカでは、タバコメーカーが未成年の喫煙に関する訴訟の結果、基金を作れと命じられた。これは強制的に基金を作らされた事例。それが自発的か、それとも強制されたかで、社会からの評価は全然違う。先ほど上原さんが「無償」とおっしゃっていたケースで3万円ちゃんともらって、それをプールして、優先度の高い先天性疾患の医療費用にすることも考えてほしい。中立性を保つのであれば、獣医師がそうした手術に使える共通の基金として積み立て、助成する方法も考ある。

奥田)企業側からNPO/NGOと対話を作るために、どういう機会を作っていくべきか。

川北)すでに基礎的な情報は共有できていて、互いの主張もおおよそわかっているのであれば、もう協働を始めてもいいと思う。既存の愛護団体を企業が支援するのも悪くないが、それだけでは企業のアクションは変わらない。企業が新しくやろうとしていることとを、NPO/NGOが協働して進めて行くという部分を進めてほしい。
生育環境の問題であれば、適切な生育をしているブリーダーの認証を自主基準として企業や業界団体が取り組むのだとすれば、そのモニタリングをNPO/NGOが行うなど、企業が取り組みを進化させる上でNPO/NGOがどうかかわれるかという部分が重要になる局面に来ている。

奥田)これに関連して、繁殖引退犬や販売不適な犬にについて、ペットショップで子犬20〜30頭売れたら1頭繁殖引退犬が発生している。継続的な引退犬の飼育費用はコスト(医療、飼育面積、人員コスト)がかかってくる。これらの引退犬の適正譲渡がコスト削減につながる。これは、企業とNPO/NGOが協働できる部分でもある。本来ペットショップで繁殖引退犬を譲渡していくことも必要と考えている。今後可能なのか?

上原)繁殖引退犬や流通に乗れない犬は、昔は殺処分していた。保健所は犬の大きさによってお金を取って殺処分していた。これまでのブリーダーは、先代からはいらなくなった犬猫は保健所にもっていくようにと教えられていた。ところが、殺処分数が減って、熊本が殺処分ゼロになった時に、熊本市は殺処分減少されているが周辺地域の県は減ってなかった。現在、環境省からも、動物福祉の面から病気や問題行動のある犬は殺処分数に含めないという方針も示されている。日本の獣医は殺処分をする人は少なくて、やる人が1%くらい。日本は文化的に、殺生を嫌がるから。

奥田)繁殖引退犬をペットショップさんで譲渡している?

上原)大手のペットショップは自分の取引先の繁殖引退犬はどんどん引き取っている。里親コーナー作っている。

奥田)里親コーナーはあるけど、保健所からきている子はいるけど、ブリーダーから来た子はいる?

上原)イメージとして保健所で引き取り手が決まらない子に協力するという形になっている。保健所もペットショップには出さないところがある。愛護団体と協力する必要がある。

奥田)大久保さんのところでは繁殖引退犬はいる?

大久保)保護団体が繁殖引退犬を保護して、募集していることはある。繁殖引退犬も名前が違うというというだけで、保健所の犬猫も、ブリーダーの犬猫も、ショップの犬猫も、同じ犬猫。マッチングできたからいいよねっていうことが本質的なことではなく、健全な動物がたくさんいることが重要。量ではなく質が重要。売れないのは、年齢が大きくなってしまったとか。犬猫のせいになりがち。そうではなく、売れないのは販売戦略の責任。需給のバランスを見て出していかないといけない。

奥田)保護犬猫のニーズは増えている?

大久保)インターネットで「保護犬猫」を検索する人は二倍くらいになっている。認知が広がっている。

奥田)マッチングという意味では、高齢の方に対しては、年齢が高い子の方がマッチングが良いという面もあるが、OMUSUBIではそのあたりの取り組みはある?

大久保)テクノロジーの力がまだ十分ではないが、問い合わせベースで高齢の方からの問い合わせはある。それぞれの状況について対話をして、メリットデメリットをお伝えして、引き取りたいのであれば応募してもらっている。今後については、データを通して、応募した方にマッチした犬猫を紹介できるようにしていきたい。

奥田)とはいえ、ペット業界では子犬子猫の売れる風潮がある。武井さんはどう思うか?

武井)猫ブームの要因の1つに日本人の高齢化があると思う。猫は散歩いらないので、お年寄りにも飼いやすい。また、犬より猫の方が飼育費用が安いというのもある。医療費も、個人的な感覚だが、雑種であれば純血種より病気にかかりにくく医療費がそれほどかからないことが多い。
最近は日本でも大手のペットショップでも、販売する犬猫と、里親募集の犬猫を両方おいているところが増えている。アメリカでも、多くのペットショップに地元の保護猫支援NPOから引き取った猫の里親コーナーがある。企業が基金を作って、地元のNPO/NGOと協力していて、保護や医療費に当てている。営利を求めるペットショップがこうした活動を行う背景には、ショップでフードや医療などのサービスを受けることも想定したライフサイクルで稼ぐモデルになっているからである。

奥田)生体販売だけで繁殖引退犬猫に関する費用負担をどうにかしようとすると難しくなる。繁殖引退犬猫は、ライフサイクル全体で支えていかないといけないだろうと思う。
確かにペットショップでも譲渡は行われているが、実際のところ、その数や割合という面においては十分でないかもしれない。数値の部分の透明性が低いと感じる。あるペットショップ系列全体で何頭売れて、その結果何頭くらいの繁殖引退犬猫・販売不適な犬猫が生まれ、その何%に対応できていますといったような、具体的な数値が見られない。調査が必要ならば各企業が率先し、シンクタンクやNPO/NGOなど連携して明らかにしていくべきだと思う。課題を明らかにするのは生体販売企業の責任だが、課題に対応することについては、本来、バリューチェーンを共有するプレイヤーすべてが協力していかないといけない。

奥田)先ほどブリーダーを評価する制度、運営を客観的に評価する制度を作っていくべきという話が出た。人と動物の共生センターとしても、企業と一緒にやっていける部分としていきたい。今の風潮としてペットショップを褒めると企業の手先と言われてもおかしくない。公正な評価として活用され、各企業の取り組みを比べることができるようにしていくために、どんな主体が誰とどんな風に評価してくか検討していくべきか?

川北)有機農産物の国際規格は、まず民間が作って運用して実績を積み重ね、それが国連(WHO CODEX)に発展した。こうした流れの中で、日本国内でも有機農産物の認証制度を作るべきだという時期に、たまたま関与することができた。もちろん世界共通の規格をつくるべきだが、しかし、アメリカやヨーロッパと日本、冷静に考えて、生物が生きる環境が違う。湿度も、面積規模も、作物の育て方も違う。湿度の低い欧米と高いアジアとで同じ規格を当てはめるのは無理がある、というロビイングをしていた。
ヨーロッパは日本のような農協がなく、農家が自分たちで有機農産物の認証制度を作って運用している。農家自身がその評価制度を作り、品質保証をする。その積み重ねが国際基準になった。大切なのは、自分が約束できる水準であるということ。日本だと国が規格を決める際に、農協の言うことを聞いて、緩くなった基準を、高い検査・認証料を払って使うことになる。日本人は第三者認証をありがたがる傾向がとても強いが、行政がやっても、効果的なものになっていない。
前述の通り、ヨーロッパでは、農家が作った組織が、基準を作り、検査・認証する。つまり自分たちがしくみをつくり、そこにお金が落ちるように、そして自分たちが作るものがよりよくなりように、自分たちの教育などに還元できるように、認証制度を設計・運営している。
ペット産業で認証制度を作るときに絶対取り入れてほしいのが、ブリーダー同士によるピュアレビュー。ちゃんとやっているかをお互いに監査しあう。もちろんペットショップが関与してもいい。しかし一義的には、供給する側が責任を持つことが大事
もうひとつ大切なのは、買う側がいつ見に来てもいい、という透明性を保証すること。ヨーロッパの有機農産物基準の信頼性は、いつ見に来てもらってもいいという抜き打ち検査を織り込んでいることにもある。一方、日本には産直という制度がある。産直は、作り手と買い手が直接つながっている。作り手は買い手に「いつ見に来てもらってもいい」ということ。これほど透明度の高い制度はないから、欧米でも高く、認証制度以上に評価されている。
誰かに作られた認証制度に乗っかるのではなく、自分たちで作った認証制度を運用することが大切。もちろん、低い水準から高い水準まで、段階設定してもいい。松竹梅があって良いということ。まだ十分にできていなくても、初期の努力を認めていくということも必要。有機農産物の認証を受けるには、無化学肥料・無農薬で3年間かかる。それまでの間、減農薬の段階を認証して買う制度を設けておかないと、農家がやっていけない。
ペット産業も、供給側の運動として、水準の段階設定をして、認証制度を作ってもらいたい。自主的な評価基準と、情報公開による透明性が重要。「いつ来てもOK」という透明性を確保できれば、認証料不要で作ることができる。

奥田)NPO/NGOはかかわって作っていくということ?

川北)理想は、業界の自主基準。守らされるのではなく、業界自身で守れる基準を作っていくことが望ましい。騙す騙されるの関係になってはいけない。

奥田)周囲のNPO/NGOはどうかかわれば?

川北)自主基準を作るときに、業界側から助言を求めたほうがいい。そして、抜き打ち視察をきちんとすること。

奥田)ブリーダーの認証については、自主基準で実施している企業はある。公正な評価をして、ランクづけしていくことは、ペットとの出会いのコーディネートには不可欠だと思う。ペトことはどう参画していくか?

大久保)認証制度については、検討している。評価を考えるときに、どのようなコミュニティで評価されるかが重要だと思っている。例えばメルカリでは、出品者と落札者が双方が評価していることが評価されている。それによりどちらの質も高まっていった。買う側と売る側双方が評価していく制度が良いのではないか。

奥田)食べログとかもそういうもの?

大久保)食べログは一方通行。買う側だけの評価になっている。犬猫でも渡す側迎える側双方がしっかりしないといけない。今ペット産業で問題なのは、ペットショップで迎えていない人がペットショップの酷評していること。受益者の評価でないと信頼できない。

奥田)実際のサービス受けた人の声は参考になるけど、外からの批判に偏ると公正な評価にならないということ?

大久保)大きなペットショップは保護犬とかもやっているけど、ペットショップ全体で批判されがち。評価しあう制度がないから。それがあれば、ちゃんとしているところは評価されて生き残り、そうじゃないところは廃れていく。結果として健全な産業ができあがる。

奥田)ネットだと評価しやすいが、リアルなペットショップでそれが可能なのか?

大久保)第三者機関がそのシステムを評価しなければ難しいし、評価制度の作り手が誰かというところも重要。

奥田)自主認証が求められるけど、双方向のシステムも検討されるべきということかと。上原さんは自主規格をやられていて、ブリーダーさんの反応はどうか?

上原)項目がたくさんあるので、大変でめんどくさいと思う。ブリーダーは活字が嫌いな方も多い。項目を作っても「わからない」という回答項目があると、そればかりになってしまう。その前段階からの教育が必要。
ペットショップはSNSで酷評されている。販売するのが怖くなっているので、小さなところは販売が怖い、なので販売やめてトリミングなどをやるところが多い。一般の家庭で繁殖するホビーブリーダーも動物取扱業の縛りで減少したから、ブリーダーそのものが減っている。JKCの会員は10万と減ってきている。

奥田)評価制度や自主基準を作るとなると、企業のリーダーシップが必要になってくると思うが、大手ペットショップチェーンは参加するか?

上原)評価制度というのはいいと思う。大手さんも、自分たちがやるというよりも、第三者機関が立ち上がって評価していけば大企業も頑張っていくのでは?

川北)日本は第三者認証が好きだが、コストがかかる。農産物、検査と認証とラベルに販売価格の2割近く取られていることを知っておいてほしい。海外で、企業と市民の対話が始まったら、企業がまず自主認証をしている。それを民間が評価している。

上原)パークとしては、今度の動物愛護管理法改正で、マイクロチップが義務化されたら、マイクロチップ接種したときに100円を基金として積み立てて、愛護団体を支援しようということになっている。過去にフード会社は愛護団体にフードを提供したけど、フードを転売したことがあった。支援したくても支援できなくなるところもある。
現状、保護犬を迎えるのが一番のステータス、その次がネット(ブリーダー直販)、その次がペットショップ。しかしブリーダーには代行販売というのがあって、空輸して、代行業者が受け取って渡すというもの、これは違法行為に近い。ペットショップでは50日経って、獣医師が検査して販売価格を決める。ネットでは、生後20日で販売価格を決めている。何を基準に販売価格を決めているのかわからない。

奥田)そうした検査や価格設定のプロセスも認証のポイントでは?

上原)ネット(ブリーダー直販)がいいとされているが、ペットショップの方が全部検査して適正価格で販売している。ネットもこの基準に合わせてくれるならいいけど、実際はそうではない。そのうえ代行もある。ネットの販売方法も問題。これに比較されてペットショップが低い評価を得るのかわからない。

川北)民泊の問題と同じ。旅館は消防や衛生など基準を守らされるが、民泊はそうではない。価格競争になった時に旅館と民泊は競合している。センスのいい旅館の経営者は、自分たちの強みを見直して、それを売りにしている。脱法者が事実としているからこそ、ちゃんとやっている人は、自分たちがちゃんとやっていることを広報しないと。それを自社単独でやるのか、業界全体で要件を決めて、要件のどの段階に当てはまるのかと言えるかどうかは大きい。自社単独でやってもいいけど、品質保証を読み解ける消費者が多くない場合は、業界自主基準。全頭対象でなくてもいい。全部じゃないけど、同じ考え方でやってますというのを正直に言うということも大切。ちゃんとラベルつけられるものから取り組む、できるところからやるということ。

奥田)業界自主基準でできるところを進めていくことが大切だと思うし、ただそれだけだと業界が勝手にやっているって言われそうなので、NPO/NGOとのコミュニケーションをとってもらって、そのうえで作ってもらえるといいと思います。

奥田)今後のCSRの推進のためにやっていこうとすることを紹介したい。今後、人と動物の共生センターでは、ペット産業のCSRの情報蓄積のために、白書の発行や、シンポジウムを実施した。今後は、ペット産業CSRに関する個別事例の調査、シンポジウムの継続的開催、動物福祉の基礎研究によるエビデンスの蓄積、ペットショップと連携した飼い主教育・アフターフォローなどを実施していきたい。大手ペットショップだけでなくペットショップがテナントに入っているホームセンター・ショッピングセンターに対しては、畜産関係とか動物実験を含めた動物福祉に関するコミュニケーションとっていくべきと考えている。

奥田)今後、ペット産業のCSRを推進するために、誰と何をやっていくべきか?

武井)生き物をお金で取引する心苦しさはあるが、だからと言ってペットショップ全廃論には抵抗がある。犬や猫を家族に迎えるにあたって、保護犬・猫もいいし、ショップからでもいいし、ブリーダーからでもいいと思う。どれが正しいとか、どれが正しいとかではなく、動物が悲しい思いしないようにすることが大切で、そうならないために私たちは活動をしている。志のあるNPO/NGOも適切なCSRを行っている企業も、向いている方向は同じわけなので、自分と違う団体を批判するだけでは問題の解決にはならない。今回上原さんのお話にあったように、ペットオークションでも一生懸命社会貢献的な活動をおこなっているわけで、それを理解することも必要。そうした事実を、自分で調べて、自分で見て、客観的に評価していくべき。私自身は、正しい情報を発信できるように情報提供していきたい。

大久保)世の中の変化にそった事業体系をとっていくべき。車産業でいえば、車に乗る若者が減る中でカーシェアが出てきた。ペットの飼育意向が減ってきている中で、新しい事業体系は何かということを産業全体で考えていく機会が必要。オンラインの仲介をやっているが、ZOZOタウンが出てきたけど、リアル店舗も十分元気だし、その違いは接客から生まれているもの。このお店の人から買いたいというもの。命を救うという前提の下で、オンラインの良いとこリアルの良いとこ、それぞれを活かし合ってやっていけるようにしたい。

上原)ダメなブリーダーをどうしていくかが重要。問題を起こさないようにやめさせていくことが必要。年に4~5件は、指導を入れて繁殖をやめさせるようにしている。犬は繁殖率がまだ低いが、猫ブームで、繁殖率が高くて、年4回繁殖する。過剰な猫ブームの中で猫が今後問題になっていくと考えている。業界を挙げて考えていかないといけない。全国のペットショップで獣医師がいるところと提携して不妊去勢等の対策をなんとかしていく。合わせて、先天性疾患についても、獣医師や大学病院と協力して、愛護団体とも協力して、進めていきたい。マイクロチップの全頭接種になれば、売り上げの一部を基金化してやっていきたい。

川北)どうせ制度を作るなら、一緒に作るしかない。次にしなきゃいけないのは、研究。認証制度や基金の作り方、企業の表彰の仕方の研究。今はNPOが企業を表彰しようとしても、まだNPOが企業を理解できていないかもしれない。さらに、NPOが企業の人材育成のお手伝いができるといい。業界と一緒に基金を作るというのもあり。どんな基金が望まれているのかを調べて、それを元に、業界の方からの声かけを待つのではなく、「一緒に基金を作りましょう」と、NPO/NGOの側から話を持っていけるといい。

奥田)人材育成については今も取り組んでいる。AHBとは、各務原店を中心にコミュニケーションよくとっている。ペットショップが飼い主にどのように情報提供するかという点で協働させてもらっているが、いろんな取り組み方がある。これを情報共有できる場を作ることができると良いのではないか。知見の蓄積によって高めあうことにつながり、それがよりよいペット産業を作っていくことになる。

司会)ここで最後の挨拶を奥田氏より

奥田)興味ある企業の方、NPO/NGOの方と共同学習できる場を作っていきたいと考えている。企業の方にはヒアリングを協力いただきたい。これらを通じて情報を蓄積していきたい。ペット産業のCSRという概念が広がっていないが、これが広がり、消費者もCSR取り組んでいるからこそ、ここから買いたいということになったり、企業の方もCSRを進めることでより持続可能な経営を目指すという好循環を生んでいけるようにしたい。皆様の力を借りていきたい。