水9のネコ 第3回:生後6ヶ月、青春真っ盛り!健康に暮らすためのワクチネーションプログラム

第1回は新生児編ということで、生まれたての子猫ちゃんを育てていくためのポイント、第2回はお家でできる効果的な消毒をお伝えしました。

クロちゃんも生後6ヵ月になり、第3回の今回はワクチンについてお話します。

【ワクチンとは】

病原性を失わせた病原体そのもの もしくはその一部を注射で体の中に入れることでことによって身体の中でその病原体に対して抗体っていうものを作らせる。それがワクチンというもの。この病原体に対して、身体は何か入ってきた!ということでこの病原体をやっつけようとします。やっつけるためのものが抗体と言われるもので、その病原体に対しての抗体が体の中にできます。なのでこの抗体がある状態だと、もしその病原体が後から入ってきてもやっつけられる、発症しない、もしくは発症してしまったとしても症状を軽くすることができると言われてます。

【猫のウイルス感染症】

◆ヘルペスウイルス

 一番有名なものは猫ウイルス性鼻気管炎。ヘルペスウイルスというウイルスからくる病気です。症状としては鼻水、くしゃみ、涙が出たり、目と鼻の症状が特徴的。熱が出たりすることもあります。潜伏感染といい、感染後にいったん症状が治まって治ったように見えていても体の中にずっと残り、免疫力が下がったときにまた症状が出てきます。

◆カリシウイルス

 猫カリシウイルス感染症は、ヘルペスウイルスと似た症状を出すこともあれば口内炎と言って歯茎とか舌などに炎症を起こしてしまうということがあります。キャリアといい、症状が治まってからもウイルスを出し続けることがあるので、ほかのネコちゃんと一緒に遊ばせるときは気を付けてください。

※猫ウイルス性鼻気管炎と猫カリシウイルス感染を合わせて上部気道感染症、通称「猫カゼ」といわれます。

◆パルボウイルス

 猫ちゃんにとっての最重要とも言えるパルボウィルス。子猫ちゃんが感染してしまうとほとんどの子が亡くなってしまうような非常に強いウイルスです。

 エタノールでは効かず、塩素系でないと効きません。非常に強いウイルスなので、パルボの子を保護していたキャットケージをきちんと消毒していないまま同じキャットケージに別の子を保護したときに発症してしまうことがあります。

◆猫白血病ウイルス

 貧血や白血病・リンパ腫などの腫瘍・免疫低下。3年以内に8割の子が亡くなってしまい、白血病ウイルスは20頭に1頭が感染すると言われています。

◆猫免疫不全ウイルス(猫エイズ)

 徐々に進行する免疫機能低下・口内炎・歯肉炎。進行すると貧血や悪性腫瘍などで亡くなってしまいます。約10頭に1頭が感染すると言われています。室内で飼っていても、昼間外に遊びに行く猫ちゃんは、猫白血病ウイルスと猫免疫不全ウイルスの両方に気を付けたほうが良いです。

【ワクチンで予防できる病気】

日本の国内では主に、3種混合ワクチン、5種混合ワクチン、FIVワクチンの3種類があります。

◆3種混合ワクチン

・ヘルペスウイルス、カリシウイルス、パルボウイルスを予防するワクチン。

 ※コアワクチン(みんなが打ったほうが良いワクチン)

◆5種混合ワクチン

・3種混合ワクチンに猫白血病ウイルス、クラミジアの2種類を追加して予防するワクチン。

 ※ノンコアワクチン(環境によって打つ・打たないを決めるワクチン)

◆FIVワクチン

・混合ワクチンとは別に単独の猫免疫不全ウイルスを予防するワクチン。

 ※ノンコアワクチン(環境によって打つ・打たないを決めるワクチン)

【母子免疫(移行抗体)のお話】

子猫は感染症に対して無防備なので、母体から新生子への移行抗体によって守られます。約10%は胎盤を介して、約90%は初乳を介して新生子へと移動すると言われています。ただし、母乳中の抗体を腸から吸収する能力は、生後時間経過ですぐに減少し、24時間経過すると吸収されなくなってしまいます。ということで、子猫にとって初乳はとても大事なので、何とかして24時間以内に初乳を飲ませるようにしましょう。初乳をしっかりと飲めれば、移行抗体の抗体価は最初ある程度あるのですが、生後8週から16週にかけて徐々に下がっていきます。感染症防御に必要な最低レベルを下回ったときに感染症にかかってしまうリスクがあるので、下回ってからワクチンを打つ期間をなるべく短くするようにタイミングを合わせてワクチンを打つと良いでしょう。

【ワクチンを打つ時期、回数】

WSAVA(世界小動物獣医師会)が作成したワクチネーションガイドラインを参考にします。

こちらのガイドラインは、たくさんのデータを集め、ワクチンを打つ回数やタイミングなどエビデンス(証拠)をもとに定期的に更新しております。

◆3種混合ワクチン

・生後6〜8週齢で初回接種、その後16週齢まで2〜4週間隔で接種を行うことが推奨。

・その後半年か1年後にブースター接種をした後、低リスクの場合は3年に1回、高リスクは毎年接種。

 ※低リスクとは、室内で1頭飼育、ホテルには預けず、頻回通院がない場合。

 ※高リスクとは室外飼育や多頭飼育、ホテルに預けたり、頻繁に通院する場合を指す。

◆5種混合ワクチン

・外に行く猫ちゃんや、猫白血病ウイルス陽性の子と同居する場合に打つ。

・ただし、事前に猫白血病ウイルスに感染していないか血液検査することが推奨されている。

・8週齢に初回接種、3〜4週間後に2回目を接種。

◆FIVワクチン

・外に行く猫ちゃんや、猫免疫不全ウイルス陽性の子と同居する場合に打つ。

・8週齢に初回接種、3〜4週間後に3回接種。

【保護施設や多頭飼育の場合】

・収容2週間前にワクチンを打つのが理想だが、無理なら収容時に全頭打つ。

・パルボなどの発症チェックのため、保護から最低2週間は隔離する。

・白血病は1ヶ月、エイズは2ヵ月の長期経過観察が必要。

【質問】

Q:ワクチンを打つことによるリスクはあるのでしょうか。

A:今のコロナのワクチンでも言われてますが、ワクチンというのは副作用はゼロではないです。ワクチンを打った後に熱が出たり、本当に命に関わる副作用だとアナフィラキシーと言って急性のアレルギー反応が出て、命に関わるという可能性はあります。あとはワクチンを同じ場所に打ち続けたりすることによって、ワクチン誘発性の肉腫(癌)ができてしまうということもあるので、ガイドライン上でもワクチンを打つ場所は毎年変えましょうと推奨されています。

Q:ワクチンリスクは猫だけですか?犬も注射の場所を変えたりしたほうがいいのですか?

A:ワクチンの誘発性の肉種は猫ちゃんだけですね。ワクチンリスクという点では、ワンちゃんにもアレルギー反応はあります。ワクチンの添付文書について、「重篤な心不全状態にある者、並びに、急性期・増悪期の間および、腎不全状態にあるものは打たない方が良いよ、てんかんの発作を示した場合にも打たないほうが良いよ」と書かれていますが、書かれているから打たないのではなく、掛かりつけの獣医さんに診察してもらって、その子の状態を見たうえでワクチンを打ったほうが良いのか、打たないほうが良いのか判断していただくほうが良いと思います。