~人と動物の共生センター 10周年記念ロングインタビュー~

人と動物が共に生活することで起こる
社会的課題の解決を通じて
誰もが他者を思いやることの出来る社会を目指して

はじめまして。NPO法人起業支援ネットの久野と申します。人と動物の共生センター設立10周年、誠におめでとうございます。理事長の奥田順之さんと出会ったのは、奥田さんがちょうど人と動物の共生センター設立に取り組んでいる頃でした。
それから10年以上の月日が流れ、今回、奥田さんに計6時間ほどのインタビューをする機会をいただきました。人と動物の共生センターの取り組みを通して、奥田さんが何を思い、何を目指しているのか。みなさまと分かち合う機会になれば幸いです。

人と動物の共生センターができるまで

「ものすごく動物好きな人のように思われたりするんですが、実はそういうわけでもないんです」と奥田さん。奥田さんが獣医を志し、そして今の事業に取り組むことになった原点は、幼いころの自分への後悔だという。

「4歳のころに、兄が拾ってきた捨て犬を自宅で飼うことになったんです。でも、散歩も“面倒だなぁ”と思いながら連れて行っていたし、その命を大切にできていなかったと思います」。その犬は奥田さんが中学生の時にフィラリアという寄生虫が原因で亡くなった。「フィラリアって薬で完全に予防できる病気なんです。でも、自分はそれをしなかった」。

こうした出来事は、当時珍しいことではなかったのかもしれない。同じような体験をしながらも、その記憶を忘れてしまう人もいるだろう。だが、奥田さんにとっては、心の奥に澱のように残り続けることになる出来事だった。「その反動でしょうか、高校生になると動物の本を読むことが増えて。今思うと“動物好きな自分”になろうと必死な時期だったんだと思います」。

失ったひとつの命への贖罪の意識。そして、いのちを大切にできなかった自分はダメな人間だという想い。それらがないまぜになりながら、「動物の予防医学を広めたい」という動機で岐阜大学の獣医学科に進学。その頃には、“将来は獣医として独立開業するのかな”と漠然と将来を思えがいていたという。

そんな奥田さんの転機になったのは、大学での臨床実習が始まった頃のことだった。「やっぱり獣医学科って、心の底から動物が好きな人が多いんですよ。実習がはじまると、そういう仲間たちとの温度差が見えてきて。あれ、僕ってここまで動物好きじゃないかもって」。そんなときに蘇ってきたのが、幼いころの記憶。飼っていた犬すら大切にできなかった自分が、獣医師として出会った動物を本当に大切にできるのか。そんな自分が動物病院で獣医として働いていいのだろうか。だとしたら、自分にはどんな貢献ができるのか。悶々とする日々が始まった。

奥田さんの学生時代
奥田さんの学生時代

そんな中で、奥田さんは動物の「殺処分問題」に出会う。当時、年間35万頭万上の犬猫が殺処分されていた。その多くが、飼い主による飼育放棄や、飼育放棄された動物が繁殖したことによるものだった。

「この問題を気にかけている人は多くいました。でも、獣医師としてこの問題をライフワークにしている人はいないんじゃないかと。社会的に問題であることはみんな気づいているけれど、手が回っていない分野だと思いました。だったら自分がそういう部分を担いたいと考えたんです」。

大学内でドリームボックスという学生団体を立ち上げ、殺処分問題の啓発ポスターをつくって近くの駅や施設に貼ったり、子供向けに動物愛護の出前授業を行ったりと精力的に活動。そうした活動をきっかけに出会った人から、動物のシェルター(保護収容する施設)の共同運営の話をもちかけられ、卒業後は起業するつもりでいたという。

「結局、その話は頓挫してしまって、卒業後は無職の状態でした。その後、友人の紹介で、社会的な合意形成支援の会社に一時的に就職しました。それもとてもやりがいのある仕事だったし、自分に向いているとも思いました。それだけに、改めて、仕事として動物に関わることをすべきかどうか悩んだ時期でもありました」。

たくさんの本を読みあさり、自分自身と向き合う日々が続いた。そんな中で見えてきたひとつの答え。それは、「自分が何をやりたいか」ではなく、「社会の中で自分自身が一番貢献できる部分はどこか」ということだった。「それはやっぱり動物領域だと思いました。殺処分問題に出会っていて、獣医の資格があって、この分野のネットワークがある。ならば、一歩踏み出してみようと決めました」。

そこから先は、早かった。いくつかの起業支援プログラムにエントリーして同時並行で進めながら、地域の中では様々な関係者への協力を呼び掛け、対話を重ねた。

「この時期にたくさんの支援をいただきながら、殺処分問題が生じる背景やプロセスを構造化して、そのための打ち手を探すことができたのは大きかったと思います。また、全部を自分ひとりでやるのではなくて、地域の様々な人や組織と協力しながら、相乗効果を生み出していくという考え方を学ぶことができました」。

人と動物の共生社会の実現には長い時間がかかるが、だからこそ持続可能な事業体としてこの問題に取り組みたい。そんな思いを胸に、まずは第一歩として飼い主と犬が一緒に学ぶスクール事業からスタートすることを決定。2012年3月にNPO法人人と動物の共生センターを設立し、「犬のしつけ教室ONE Life」を4月にオープンさせた。

人と動物の共生センターが目指す社会とは?

人と動物の共生センターは、「人と動物が共に生活することで起こる社会的課題の解決を通じて、誰もが他者を思いやることの出来る社会創りに貢献する」という理念のもと、現在5つの分野を事業領域として取り組みを進めている。

  1. 適正飼育の普及啓発
  2. 高齢者とペットの共生(ペット後見)
  3. ペット産業のCSR推進
  4. ペット防災の推進
  5. 野外で繁殖する犬猫対策

そこで目指すのは、ペットを飼っている人、ペットを飼っていない人、そして動物の三者がそれぞれにその権利が守られ、幸せを感じることのできる社会だ。

「共生社会とは、動物の愛護だけで達成できるものではないと考えています」と奥田さんは語る。現在この社会は人間を中心に構成されており、人間の感情や意思を無視して、動物を守ることだけを考えることは現実的ではないからだ。

そんな中でも、社会のペットに対する考え方は少しずつ変容してきた。動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)でも、2012年には動物取扱業者(犬猫等販売業者)の適正化、災害対応、終生飼養に係る努力義務等が盛り込まれ、2019年には動物虐待に対する罰則の引き上げや、飼育が困難にならないよう繁殖防止措置の実施も規定。2021 年には動物取扱業を対象としたいわゆる数値規制も施行された。

こうした法整備や社会的な機運の高まりも背景にしながら、2015年前後より各地方自治体では、殺処分ゼロも達成されはじめている。家庭への譲渡が増加したことがその要因のひとつだが、高齢の犬猫や攻撃行動を示す犬猫など、家庭への譲渡が難しい個体もあり、その飼育は保護ボランティアや保護団体が引き受けており、限界があるのも事実だ。

そこで2017年に人と動物の共生センターが提示した「余剰犬猫問題蛇口モデル図」では、更に課題が生み出される構造に着目をしたことで注目を集めた。

余剰犬猫問題蛇口モデル 注記付き

人と動物の共生センターでは上段の蛇口(ペット産業、飼い主、野外繁殖)への対策が必要と考えているが、目の前の犬猫を保護する活動に比べると、どうしても見えにくく、わかりづらい領域でもあり、取り組む人や組織も、取り組みのための資金などの資源も限られているのが現状だ。

一方で、現在の状況に課題を感じている人は多いとも奥田さんは言う。「この 10 年間で当団体にも、個人の方や組織・企業などから、様々なヒアリングや相談が寄せられています。多くの方が人と動物の共生社会を創りたい、殺処分問題を解決したいという思いを持ち、新しい取り組みを模索しています。最近は、動物に関係のない企業や、人間の福祉系など他分野の NPO等、防災関連の組織などからの相談も多く寄せられています。相談の中で感じるのは、殺処分ゼロがゴールではないという事です。多頭飼育崩壊にしても、高齢者とペットの共生にしても、ペット防災にしても、殺処分がゼロだから解決する問題ではありません。皆さんが目指す殺処分ゼロの一歩先の社会は、人と動物が共に暮らす上で起こる様々な課題について、適切な解決策が提示されている社会ではないかと思います。我々は、皆さんが持っている『動物たちのために、人と動物の共生の社会づくりのために何かしたい』という気持ち対して、なんらかの実践的・具体的な提案をすることが役割であると考えています。具体的な仕組みや活動をデザインすること、それぞれの活動者・実践者が学んだりつながりをつくったりする場をつくること、具体的に活用できるツールを開発し広げていくことなどが、求められていると感じています」。

更に奥田さんは「ペットを飼っている人にとって、ペットが家族の一員であるという認識はずいぶん高まってきました。ペットのあり方について考え、心を痛めている人も多い。ただ、動物が社会の一員として当たり前の存在になっているかといえば、まだまだだと思うのです」。「災害時に動物連れで避難できる避難所やペットを飼っていた高齢者の方が入院されるときの対応など、一定の受け皿は生まれつつあります。でも、現実は高齢者施設の職員の方の中で動物好きな方が個人的に頑張ってくださってなんとかしているというケースも多いのです。しくみとして社会に実装されていると言えるようになるには、個人の頑張りを越えたしくみづくりが必要だと思います」と語る。

ペットも宿泊ができる施設やペット向けの住宅など、ペットやその飼い主に提供される商品やサービスも増加している。しかし、まだそれが付加価値になる時点で動物が特別視されているのではないか。「特別な存在」である動物を社会が「受け入れる」ことを目指すのではなく、人も動物もともに社会の担い手としてそれぞれの役割を果たしている未来は、誰かが特別に頑張ったり負担を背負い込んだりするのではなく、もっとゆるやかでありふれたものとして、人と動物がともにある状態であると奥田さんは考えている。福祉や防災といった日々の人の営みのなかに、ペットの存在が当たり前に編み込まれているような、そんな社会を人と動物の共生センターは目指しているのだ。

2022年春、人と動物の共生大学設立へ

そのためにも、人と動物の共生についての関心を持つ人をさらに幅広く増やしていくことが必要だ。それは人と動物の共生社会を支える担い手でもある。

一人ひとりが持つ「人と動物の共生のために何かしたい」という想いを応援することが必要だと考え、人と動物の共生センターでは、2022年春から「人と動物の共生大学」を本格的に展開していくこととなった。

「実はこの分野は、他の社会課題に比べて関心を持っている方の裾野がとても広いと感じます。自分もなにか貢献したいと漠然と思っている方も多い。そういった潜在的な想いを持っている方々が、やってみたいこと・できることにチャレンジする一歩を踏み出す、そんな働きかけができればと考えていました」。

折しもコロナ禍の中で動画配信による情報発信や、オンラインで全国から参加者を募っての学びや議論の場づくりの基盤も整ってきた。その基盤を活かせば、学びとつながりの場を作り、「人と動物の共生のための第一歩を実践する場」を継続的に展開することが可能だと考えたのだ。

「中にはすでに動物に関わる職業をされていて、様々な経験やスキルを持っているのに、自分にはなにもできないとおっしゃる方もいます。確かに動物についての専門的な知識やスキルと、地域の中で小さなプロジェクトを生み出して回していくのは違うノウハウが必要です。でも、誰にでも必ずできることがある。自分はなにをしたいのかを改めて考えたり、仲間をつくったり、学びや対話を重ねて一つ一つ形にしていく、そんなチャレンジを応援したいと考えています」。

獣医師・動物看護師やトリマー・トレーナーなどの動物のプロから、動物のNPO活動に参加するボランティア、企業や行政の役職員、大学関係者、学生、一般飼い主まで、誰もが分け隔てなく共に学び、ネットワークを築くことで、知識や情報とともに新しい出会いやつながりが得られ、自分一人ではできないことでも具体的な取り組みとしてチャレンジが生まれるという。参加のハードルを下げるために参加費は無料だ。

人と動物の共生社会においては、ペットを飼っている人も飼っていない人も、動物が好きな人もそうでない人も、すべての人が「当事者」になる。小さくともたくさんの担い手が生まれ、その活動が地域や社会の中で展開されていくことで、今まで関心がなかった人にも情報が届くようになり、考えるきっかけを提供できるようになる。

「どんな人にもどんな団体にも、それぞれ大切にしたい価値観や考えがあって、それが違うのは当たり前です。でも、その違いに分断されてしまっていたら何も始まらない。それぞれの違いを前提として、対話や学びでつながり、越えていけるような実践の場になったらいいと思います」と奥田さん。

「人と動物の共生」というテーマにおいて、学ぶべきことは尽きることがない。「単に動物や飼い主をターゲットにしたビジネスや商品・サービスを世の中に増やすということなら、ある意味簡単にできると思います。でもその結果、不適切な飼育が増えたら意味がありません。可愛がっているつもりでも、動物の生態に反した関わり方をしてしまい、動物にとっては虐待にあたることもあります。動物が好きということと動物を理解しているということは、必ずしも一致しません」。現代社会において、人間が動物より強く、ある種の権力を持っているのは事実。そうした力関係がある以上、言葉を持たない動物を理解しようとするのは権力を持っている人間の側の務めだと思いますし、弱い立場の相手を意図する・しないに関わらず結果的に抑圧する行為は素敵ではない。動物の生態や習性、動物の心や動物が発するメッセージを理解した上で物事を考えられる人を増やすことが大事だし、自分自身もまだまだ学び続けていかなければならないと思っています。こうした取り組みを続けていくことで、共生社会に向けての社会全体の感度が高くなり、新しい文化の土台が生まれていくのではないでしょうか」。

現在、この運営経費を賄うため、ふるさと納税を活用した寄付募集(クラウドファンディング)も実施している(2022年1月29日まで。https://www.furusato-tax.jp/gcf/1426)。

様々な価値観の違いを開かれた場での対話で乗り越えたい

人と動物の共生センターは、「犬のしつけ教室ONE Life」や、「ぎふ動物行動クリニック」を通してペットや飼い主を直接的にサポートする事業を展開しつつ、「ペット後見互助会とものわ」という終生飼育のしくみづくりや、ペット防災を啓発するための「ペット防災カレンダー」にも取り組んできた。また災害時の動物避難所についての取り組みはNPO法人全国動物避難所協会の活動として独立し、動物避難所を全国に広げ、またその情報を発信すべく、活動を始めている(うちトコ動物避難所マップ https://uchitoko.jp/)。

 その活動は多岐に渡るが、動物や飼い主のみならず、ペット産業、特に生体販売業が果たすべき社会的責任の対応への働きかけを進めてきたのも特徴の一つだろう。

ペット産業への働きかけについては、法人内外でも賛否両論があったという。奥田さんは、ペット産業に対しても批判から入るのではなく、対話し、現状を少しでも改善するための具体的な提案を前提とした議論を重ねることが重要だと考えているが、その姿勢が「奥田さんはペット業界とつるむのか?」と言われることもある。

しかし、奥田さんの想いはぶれることないようだ。「現状の生体販売に多くの問題があるのは事実ですが、それらすべてをひとまとめにして“悪”とみなし、批判するだけではこの現状を変えることはできない。人間と動物の出会いをコーディネートするという業を一旦認めた上で、そこにどのような問題がありどう変えたらいいのか、こちらも共に考え、改善のための具体的な提案をしていくことが大切だと考えています」。

2021年にはペットショップチェーンを展開する株式会社AHBが動物福祉向上のためのアドバイザリーボードに参画している。このアドバイザリーボード設置は、ペット業界が適正に社会とコミュニケーションを図りながら変化をするためには、各種の専門家が忌憚なく経営者に意見を伝え、ともに議論をする場が必要と考えた奥田さんが提案し、実現したものだ。社会の声をペット産業に届け、具体的な変化を共に考えていくことが、必要だと奥田さんは考えている。

人と動物の共生センターが目指すのは「人と動物が共に生活することで起こる社会的課題の解決を通じて、誰もが他者を思いやることの出来る社会」であり、すべての事業のプロセスにおいて、立場の異なる他者に対して対等に誠実に向き合うことが求められる。

「自分も含めて完璧な人間はいないし、どんな活動も事業も最初は未成熟です。でも、ダメなもの、できていないものを切り捨てていったら何も残らないし、何より多くの人が参加したいと思えるものにはならないと思うんです。誰もが学び、成長できる社会で合ってほしいと思うし、その具体的なツールや方法を生み出していくのが自分たちの役割だと感じています」。

志を同じくする人たちの連携やネットワークももちろん大切なのだが、立場や価値観や見えている世界が違う人や組織の間をつなぎ、対話を促進し、互いの言語を通訳・翻訳していくことも自身に求められている役割ではないかと感じているという。共生社会とは議論や対立がない世界ではなく、例えどのような議論や対立があったとしても、それを見える場所に位置付けた上で乗り越えていける社会なのではないか。そして、その上で一歩だけでも相手の側に近づこうとする人が増えてほしいというのが奥田さんの願いだ。

「人や社会はどうあるべきかということは、ずっと考えています。人であれ、動物であれ、相手がどういう存在で何を考えているのかを知ろうとすることや、相手の幸せや尊厳とはなにかということに関心を持つこと。人間を人間たらしめる倫理観とでもいうのでしょうか。何かが行き過ぎているということに気づき、バランスをとろうとする意識や意図が必要だと思います」。

やりたいことよりもやるべきことを

実は奥田さんには、あれをやりたい・これをやりたいといった「やりたいこと」はそんなにないと言う。

「奥田さんは何がしたいんですか、これからどうしたいんですかって聞かれることも多いんですけど、いつも“うーん、なんだろうね?”って。自分自身がやりたいことよりも、必要なのに誰も手をつけていない部分だとか、自分以外の誰かが挑戦したいことに興味があるというか。やりたいことよりも、どうしたら必要なことが実現できるのだろうかということを考えることが多いです」。

やりたいことより、やるべきこと。それが奥田さんのキーワードなのかもしれない。この社会の現状を捉え、将来を展望したときに、「人と動物の共生社会」を実現するために不足してること、必要とされていることはまだまだたくさんある。10年後、20年後の社会の変化を見据えながら、現状を少しでも具体的に前に進めるためにどうしたらいいかを考え、具体的に形にすること。「それが自分にとっての“やりたいこと”なのかもしれませんね」。

人と動物の共生センターでは、2018年に法人の中長期ビジョンを策定した。

第1フェーズ(2012~2018年)

創業期。「犬のしつけ教室ONE Life」の立ち上げ。事業基盤の構築。

第2フェーズ(2018~2024年)

5領域(適正飼育の普及啓発/高齢者とペットの共生(ペット後見)/ペット産業のCSR推進/ペット防災の推進/野外で繁殖する犬猫対策)での活動を行い、それぞれにサービスを確立する。小さくとも社会課題を具体的に解決するためのしくみをつくる。

第3フェーズ(2024~2030年)

それまでのネットワーク・知見・組織基盤を最大限に活用し、全国で多様なセクター(NPO、起業家、企業等)の支援を行うとともに、犬猫以外のより広い人と動物の関係の課題についての知見を拡げる。

第4フェーズ(2030~2036年)

これまで協働してきた団体とともに、犬猫に限らない広い人と動物の課題に目を向け、各課題に対して様々な主体が協働し、判断し、実行することを通じて、人と動物の関係に関するあらゆる課題に関して、人々が自然に気づき対応している社会に向けての土壌づくりを行う。

まだ今は第2フェーズの半ば。それでも人と動物の共生センターの理念や取り組みは、多くの人の協力に支えられ、そこに集った人々の力や想いが新しいチャレンジを生み出すという循環を生み出し始めている。

奥田さんには、これまでの出会いの中で、自らを律するときに思い出す人物が何人かいるという。学生時代に出会った先生からは、実学とともに人間学や倫理学の大切さを、起業するときにエントリーした起業支援のプログラムからは理念の大切さや“At your side.”の精神を学んできた。そして、新しいことを始めようとするとき、乗り越えなければならない状況に直面したとき、これまで出会い、影響を受けた人たちから「本当にそれでいいのか」「手を抜いていないのか」と問われるような気持ちになるそうだ。

奥田さんは専門家として、同時に起業家・経営者として、これまでもたくさんの判断や決断を重ねてきた。そして、それはこれからも続いていくだろう。時には間違えることも、うまくいかないこともきっと訪れるに違いない。それでも「命」に関わる営みを業にとして選んだ以上、奥田さんが「手を抜く」ことは決してない。

これまでの10年を超えた次の10年へ。人と動物が共に生活することで起こる社会的課題の解決を通じて、誰もが他者を思いやることの出来る社会に向けて、より多くの人と手を携えながらの奥田さんの歩みはこれからも続く。

久野美奈子(くのみなこ)

取材・文:久野美奈子(くのみなこ)

NPO法人起業支援ネット代表理事。身の丈の起業やコミュニティビジネスを支援するセミナー、相談、経営・運営支援等を展開。起業支援ネットが主催する「起業の学校」や東海地区の若手起業家支援プログラム「東海若手起業塾」などの取り組みを通して、人と動物の共生センター立ち上げ期の奥田順之さんと出会う。現在は、起業支援ネットの活動と並行して、インタビュー&ライティング&キャリアサポート「きくとかく」の活動にも取り組んでいる。

NPO法人起業支援ネット https://npo-kigyo.net/
きくとかく https://kikutokaku.hatenablog.com/