9月9日に動物の福祉と倫理第2回目のセミナーを開催しました。
参加者は42名で第2回の今回は『動物のココロ「認知と情動」/恐怖・怒り・喜びとは何か?』というテーマで、午前中は上野先生からの講義を聞き、午後からは前回同様約6人ずつのグループでのワークショップを行いました。
午前中の講義で、動物は心を持った存在で、相手の心というものは対動物だけでなく、対人であっても全てを理解することはできない。そのため人はその心を自分の心と共感しながら読み取り理解していく。また、心の働きを情動と呼び、動物は怒り・恐怖・喜び・愛情など基本的な情動を感じることが出来ますが、人と全く同じように嫉妬、罪悪感、恥など高次の情動まで感じているわけではないことなどの情報提供をいただきました。また、情動と脳の働きの関係にも少しご講義いただき、ラットにもくすぐったい”という感覚があり腹部辺りをくすぐると“くすぐったいと感じるときに発する音”を出し、心地よさを感じてまた寄ってくるという、研究結果があるということを知りました。ひと昔前なら「動物は涙を流さないから痛くない、悲しくないんだ」というような考えが変わったように、研究は日々進んでおり、今までの概念を見直す機会を持つことは、動物に関わっていくうえで、とても重要だと思いました。
午後のワークショップについては、前回は参加者からの意見を元にワークショップのテーマを決めましたが、今回は上野先生からワークのテーマをご提供いただき「(動物を)人のように考えることはどこまで適切か」「動物への配慮、何をどう考えるのか」についてグループワークを行いました。
一つ目のワーク「(動物を)人のように考えることはどこまで適切か」とは
擬人化ということがテーマなのですが、不適切と考える擬人化に犬のカラーリングや服を着せることなどファッション的なことを不適切、クーラーをつける、歯磨きをするなど動物の健康面に配慮していると考えられることには適切だという意見がありました。
会場の意見として、動物が自分で判断するわけではないが動物の特性上必要なことかどうか、必要ないのに人の満足や価値観の押しつけでやらせていないかどうかが良しとするか悪しとするかの判断基準である、という意見が多かったように思います。
2つ目のワークは与えられた物事に対して動物はどんな感情を抱くか、そしてそれは与えないほうがいい物事なのか、例えば不快に感じることでも与えることが必要なのかということを話し合いました。わかりやすいところで言うと、
・体罰は痛みを感じさせるので与えてはならない。
・散歩は喜びを感じるので与えるべき
・ワクチンは痛みを感じさせるが命を守るために与えるべき
・引っ張るという行為は程度によっては与えるべきではないし、与えるべきでもある
などの意見がありました。
動物が喜びそうなこと、気持ちが落ち着きそうなことは「与えるべきだ」と考え、痛み、恐怖、不安を感じることは「与えるべきではない」と考える意見が多いように思いました。「与えないほうがいい」という意見には「保定は恐怖を与えるからしないほうがいいだろうけど、治療するためには仕方ない」といったように人間側の事情が大きいように思いました。
今回のテーマである「認知と情動」が何かということを理解するのが中々難しく、グループワークで理解を深めるのに、皆さん悩まれた様子でした。情報提供の時間配分やワークショップの進め方は次回への反省として生かし、皆さんの考えをブラッシュアップできるより良い機会になるよう尽力したいと思います。
次回は『環境エンリッチメントと動物の幸せ』~動物が主体性と潜在能力を発揮するために~というテーマで開催いたします。環境エンリッチメントとは飼育動物の異常な行動を減らしてその動物の正常な行動の多様性を引き出すための、飼育環境に対して行われる工夫のことです。室内飼いは本当に幸せですか?外飼いは本当に不幸ですか?動物園の動物は不幸ですか?皆さんの様々な経験をもとに色んな角度から意見を交わせたら、人と動物の関係がまた一歩良い方向へ進むのではないでしょうか。
より多くの方のご参加をお待ちしております。