動物たちのために寄付をしたい、遺産を遺したいと思っても、寄付先となる信頼できる動物関係団体が見つからなければ資金提供をすることができません。
特に遺言書に遺産を寄付することを記載する『遺贈』の場合は、遺言書を書いてから10年以上たってから、また、遺言書を書いた本人が亡くなってから、寄付をすることになります。そのため、数年で活動がなくなってしまう可能性のある団体を選択するわけにはいきません。
遺贈に限らない寄付についても、限りある資金を有効に活用できる団体に寄付しなければ、意味のない寄付になってしまうことがあります。
本記事では、遺贈や寄付をするときに、信頼できる団体を探すためのポイントをご紹介します。
※当団体、認定NPO法人人と動物の共生センター(代表:奥田順之獣医師)に対する寄付・遺贈等のご案内は、以下のページからご確認ください。
信頼できる寄付先となる動物愛護・保護団体の選定のためのポイント
良い寄付先に寄付をするとは、寄付を有効に活用できる団体に寄付をすることと同義です。寄付者であるあなたの意思を尊重し、不正を行わず、適切かつ効果的に支出できる団体に寄付しなければなりません。
大まかには以下のような団体がその対象となります。
- 日常的に情報発信を行っている団体
- 組織基盤が強く、数年で廃業しない団体
- 社会課題の根本的な解決に取り組んでいる団体
- 仕組みを作る活動・人を育てる活動を行っている団体
①日常的に情報発信を行っている団体
情報発信は、その団体が信頼できるかどうか判断する上で、必要不可欠です。寄付いただいた資金の活用の報告を行うことは、寄付をいただく団体の最低限の義務です。団体のホームページやSNS公式アカウントで積極的に情報発信を行っていない団体はその時点で除外ということでよいでしょう。
団体のホームページを調べ、以下のポイントを確認しましょう。
- 団体名でホームページが検索できるか
- できなければ、ホームページが存在しないかも。
- ホームページの内容を読んで、活動内容が十分に理解できるようになっているか確認しましょう。ホームページがあっても中身がなければ意味がありません。
- ホームページ/SNSの更新頻度
- 1年以上更新していないのはNG。
- SNSなら3か月以上放置されていれば日常的に使われていないと考えてよい。
- 決算・事業報告
- NPO法人であれば、決算と事業報告の公開は義務付けられています。他の組織形態であっても、決算と事業報告が公開されていないというのは問題です。決算書と事業報告がなければ、事業が適切に効果的に実施されているか判断することはできません。
- 遺贈を検討している場合、収支のバランスがとれており、赤字になっていないか確認が必要です。複数年度の赤字が常態化している場合、数年後にも団体を維持できるか不透明ということができます。
- 年次報告書
- 安定的な事業運営を行っている団体では、年次報告書が発行されていることが多いです。年次報告書の有無を確認するとよいでしょう。
- 連絡先
- そもそも連絡先が公開されていなければ寄付はできません。連絡先を公開していない団体は寄付先としてはNGと考えていいでしょう。
- 連絡先がわかれば、電話でもメールでも連絡してみるとよいでしょう。常識的な範囲で対応が行える団体でないと、大きな額の寄付を扱うことは難しいでしょう。
②組織基盤が強く、数年で廃業しない団体
遺贈寄付のような数年、あるいは10年以上先の寄付を考える場合には、組織基盤の強さは重要です。実際に資金を寄付する段階でその団体が解散していたら元も子もありません。組織基盤が強く、数年で廃業しない団体を選ぶことが重要です。
団体ホームページやSNSの情報、団体への問い合わせにより、以下のポイントを確認しましょう。
- 法人格の有無
- 基本的に会計管理の観点から、法人格のある団体を優先すべきでしょう。
- 法人格がなければ、法人のお金と代表者個人のお金が区分けされていない場合もあります。
- 法人格の中でも、認定NPO法人や、公益財団法人のような、公益性の担保された法人格を持っている団体はより信頼度は高いといえるでしょう。
- 設立からの年数
- 5年以上経過している団体の方が継続性は高いといえるでしょう。
- 年数が長ければいいわけではありませんが、長期にわたり安定して活動を行っている実績がある団体はすぐに廃業する可能性は低いでしょう。
- 繰越利益剰余金(正味財産/純資産)
- これまでの活動の中で、十分な繰越利益剰余金(正味財産)の額があることは信頼性につながります。
- 団体の財産があるということは、すぐには潰れないということを示しています。
- 決算書の中に、貸借対象表が公開されていると思います。貸借対照表の中で純資産の額の合計が確認できます。純資産の額が少なすぎないことが重要です。
- 現預金の額
- 現在の現預金の総額が少なすぎると、法人の事業がストップしてしまう危険性が高くなります。
- 年間支出額の半分程度の現預金があれば、収入がゼロになっても半年は生き残ることができる法人ということになります。
- 年間支出額の10分の1しか現預金がなければ、何かトラブルが発生したら一気に経営が苦しくなります。
- 代表者の年齢
- 代表者の年齢が60代・70代となってしまうと、遺贈寄付を行う段階で代表者も前線を退いている可能性もあります。
- 代表者が30代・40代であれば、長期にわたり安定して代表を務められる可能性が高くなります。
- また、後継者の存在があるかどうかという点も、団体に確認するとよいでしょう。
③第三者認証を取得している団体
信頼できる団体を探すにあたって、第三者認証を取得しているかどうかは重要なポイントです。NPOの評価に使われる第三者認証としては以下のようなものがあります。
グッドガバナンス認証
グッドガバナンス認証は、JCNE(非営利組織評価センター)が提供する、第三者認証で、その名の通り、適切なガバナンス(組織統治)がなされているかどうかの評価です。評価項目は、理事会がきちんと行われているか、関係者と対話の機会を持っているか、法律に従って運営されているかなど、23の項目にわたって評価されます。様々な助成財団などが、グッドガバナンス認証を取得した団体に対しての優遇措置を設けています。
当団体では、2020年にグッドガバナンス認証アドバンス評価を取得しています。
CANPAN情報公開レベル
CANPANは、日本財団が運営する、NPOのための情報公開サイトです。各団体が、CANPAN上に情報を掲載することで、情報公開レベルが付与されます。情報公開レベル★★★★以上の団体では、決算書や事業報告書を含め、適切な情報公開が行われていると言えます。
認定NPO法人の取得の有無
第三者認証ではありませんが、認定NPO法人を取得している団体は、会計的にも組織的にも信頼性が高いです。そもそも、認定NPO法人の制度は、税制優遇に結びついています。一般のNPO法人に寄付しても、税額の控除は受けられませんが、認定NPO法人では寄付額の約半額の税額控除を受けることができます。
そのため、認定NPO法人は簡単に取得できるものではなく、多くの人から寄付を受けていることや、定款や法令に沿った適切な運営がなされていることが、行政の手によって確認されます。かなり厳しい基準があるもののため、組織基盤の弱い組織では取得は難しいです。
当団体も2020年に認定NPO法人となりましたが、3年程度の時間がかかっています。
④資金が適切に(効果的に)活かされている団体
せっかく遺贈や寄付をしても、効果的に活用してもらえないのであれば意味ありません。
和歌山の動物愛護センターの行ったふるさと納税によるクラウドファンディングでは、猫の避妊去勢手術のために2800万円近く集めたものの、その費用がほとんど使われず、猫の避妊去勢も数匹しか行われなかったということが報道されました。
参考:【特集】「犬・猫殺処分ゼロ」目指すはずが... 不妊去勢手術費用のために寄付金「2800万円」集まるも 昨年度の手術はわずか"猫8匹"
和歌山に限らず、猫の避妊去勢手術に関しては多数の地域で寄付金の募集が行われています。同じ3万円を寄付した場合でも、ある団体では避妊去勢専門の獣医師の元で5匹の手術(1匹あたり6,000円)を行っているにもかかわらず、別の自治体では、一般の動物病院に避妊去勢手術を依頼して1匹3万円の手術を受けさせていることもあります。
動物のために遺贈をしようと考えると、「自治体は間違いないから、動物愛護センターに遺贈を」と思う方も少なくありませんが、自治体は予算の使い方の融通性が低く、必ずしも効果的に使われない場合もあるため、「自治体=安心」と思わない方がよいでしょう。
保護団体間の比較の場合、1頭譲渡あたりのコストを計算するという方法もあります。団体によって、保護する対象が異なるため一概に言えませんが、犬の保護活動では、医療費含め1頭の譲渡あたり10万円~100万円のコストがかかると思っていただくとよいでしょう。ボランティアを中心とした団体では人件費がかからないため、譲渡までに医療費とフード代等10万円以下で済む場合もあります。有給スタッフを雇用している場合は、1頭あたり100万円以上のコストがかかっている場合もあります。
⑤仕組みを作る活動・人を育てる活動をしている団体
寄付や遺贈は動物の活動にとって貴重な資源です。その資源をより効果的に使うことは団体の責務と言えます。最大限効果的に活かすことのできる団体への寄付・遺贈を考えるべきです。
ここで考えるべきは、短期的な目線で目の前の動物の医療や管理の費用に使われるのか、長期的な目線でそうした動物が発生しないようにする仕組みづくりや次世代の人づくりに投資されるかという点です。もちろん短期的な目線で資金を使うことも大切ですが、課題の根本解決には長期的な視点での投資が必要です。
動物活動では、目の前の動物の医療費などにどうしても費用がかさんでしまいます。そのため、長期的な投資に資金が回らないという現実があります。遺贈寄付のような大きな寄付では、この構造を変えるべく、長期的な投資を行える団体への寄付を検討いただくことも選択肢に入れていただけるとよいでしょう。
猫の過剰繁殖問題の例
保護活動に寄付する場合は、保護されている動物の食事や医療に使われ、その動物1頭の命をつなぐために使われます。
一方、野良猫の避妊去勢を行う資金として使うの場合、1頭の避妊去勢を行うことで、その後生まれてくるかもしれない10、100の命を助けることができます。助成金の場合、6,000円助成して1頭を避妊去勢しても、その背後にはより多くの命があることになります。
では、さらに、野良猫の避妊去勢専門の動物病院を作るための設備投資として資金を活用すれば、長期間にわたりその地域の拠点となる施設を作る手伝いができるようになります。
さらにさらに、野良猫の避妊去勢専門専門の動物病院を運営したいと思う獣医師や、地域団体に対する研修活動を行うプログラムの開発、すなわち人材育成・教育というプロジェクトがあれば、そこで育った人材が各地で成果を上げることが考えられます。
より根本的に、波及的に課題を解決するためには、課題を解決しうる仕組みづくり(TNR専門の動物病院もその一つ)や人づくり(人材育成プログラムなど)に投資することが最も効果的と考えられます。
小さい団体に遺贈したい場合(基金の活用)
上記のような条件は、小さい団体では整備が難しい面があります。
一方、ある程度の財政基盤がある大きな団体ではなく、ボランタリーな運営を行う小さな団体にこそ資金を提供したいと考える方もいらっしゃいます。そうした場合には、大きな団体内に、資金提供のための助成基金を設置してもらうという方法があります。つまり、遺贈先は大きな団体にするものの、その使途については、小さな団体への助成金にしてもらうという形をとるわけです。このような基金を「冠基金」と呼びます。
冠基金を設置する場合、公益財産法人や、認定NPO法人に相談し、「小さな団体への助成を目的とした冠基金が設置できるか?」について相談します。受け入れ可能な法人が見つかれば、どのような団体にどのような目的でどのような規模で助成を行うのか、検討を進めます。大枠が決まれば、団体内に基金を設置してもらうための決議を行う、もしくは、遺贈が発生した段階で基金を設置する旨を確認した書面を決議してもらいます。そして、寄付者本人は、基金宛に寄付をする、あるいは、遺贈寄付をするための遺言書を作成します。
このように、大きな団体を介して、小さな団体に寄付をするという形にすることで、広く資金を活用できるようになります。一方で、大きな団体には助成先の公募・審査・決定、その後の助成先への伴走支援といった一定の事務負担が発生することから、寄付金額の20~25%はそうした事務経費に必要であることはご承知おきください。
尚、当団体(認定NPO法人人と動物の共生センター)でも、冠基金の設置については相談を受け付けております。
寄付・遺贈の相談窓口
当団体、認定NPO法人人と動物の共生センターでは、自分の財産を動物たちのために活かしたいと考えている方のために、寄付・遺贈の相談窓口を設置しています。当団体へのご寄附でなくても問題ありません。
獣医師であり、NPO・社会事業経営の専門家でもある、当団体代表の奥田順之が相談対応させていただきます。お気軽にお問い合わせください。
お気軽にお問い合わせください。058-214-3442受付時間 9:00-17:00[不定休]
お問い合わせ