【多機関と連携し、動物の過剰繁殖問題に向きあう】

認定NPO法人人と動物の共生センターでは、「野外動物(主に猫)の過剰繁殖問題」に取り組んでいます。猫の過剰繫殖の問題は、公衆衛生状況の悪化、ロードキル、殺処分、多頭飼育崩壊等の問題が関連しながら発生しています。

当法人による猫の路上遺体回収数調査(ロードキル調査:2018)では、ロードキル数は、殺処分のおよそ10倍ということがわかりました。

猫の命の問題だけでなく、猫を轢いてしまう、その死体を見ることは住民の精神的苦痛も考えられます。また、かねてより猫に関する問題が発生していた、可児市鳩吹台で実施した住民アンケート(2016)では、猫の被害に迷惑を感じている人が全体の80%を占めました。

また、野外での繁殖だけでなく、個人宅内などで犬猫が繁殖を繰り返し、多頭飼育崩壊を起こしてしまう事例も散見されます。個人宅での繁殖は、問題が把握しにくく、発覚時には数十頭となることもあります。

多頭飼育に陥ってしまうことや、繁殖抑制をせずに野良猫への餌やりを繰り返してしまう背景には、精神疾患や社会的孤立があることが指摘されています。これらの問題の解決には、動物に対する支援だけでは不十分であり、人間の社会福祉の支援者と動物に関わる支援者の連携が必要だと言われています。

(参考)人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン~社会福祉と動物愛護管理の多機関連携  に向けて~(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/r0303a.html)

【必要なのは「避妊去勢手術」+「福祉との連携」】

野外繁殖問題の解決には、行政と地域住民の協力による、飼い主不明の猫への避妊去勢手術を含む、TNR活動や地域猫活動が、対策として有効だと私たちは考えています。東京都練馬区ではその効果が測定されており、ボランティア登録数の増加と共に、ロードキル数が10年間で半減、苦情も年々減っている結果が出ています。(NPO法人ねりまねこブログより)https://ameblo.jp/nerimaneko/entry-12662816243.html)

しかしながら、室内・屋外を問わず、繁殖抑制をせずに、餌やりを行う増やしてしまう事例を減少させるためには、避妊去勢手術だけでは不十分です。個人所有の猫を勝手に手術することはできず、人と人との話し合いが必要になってきます。

前述のガイドラインによると、多頭飼育の解決を困難にしている要因として、「飼い主が生活に困窮しており、引き取りや不妊去勢の手数料を払えない」、「飼い主が動物の所有権を手放さない」、「飼い主とのコミュニケーションが取れない」ことの3つが挙げられています。これらの課題により介入が遅れることで、悪臭や衛生状態の悪化など、周辺の公衆衛生の問題にも発展していきます。

多頭飼育の課題は、動物の支援者だけでなく、社会福祉、公衆衛生など様々な機関が連携しなければ、事体の深刻化を防ぐことはできないと思われます。一方で、現在そうした機関が、認識を一つにし、足並みを揃えて活動を行っているかといえば、そうではありません。ここが、多頭飼育の課題、猫の過剰繁殖の課題のボトルネックであると私たちは考えています。

【さまざまな連携の形を作る】

昨年、当センターに猫について寄せられた相談4件(岐阜市3件、笠松町1件)のうち1件は若い世代の方、3件は70才以上の高齢の方からでした。高齢であることから、行動が制限され、問題解決が困難な状況にありました。先に状況について聞いて把握しておくことで、保健所、地域包括センター、町内会などへ協力をお願いし、相談者と共に解決にあたることができました。

最初の1匹のうちに避妊去勢処置を行っていれば、過剰繁殖はふせげます。早期に発見、介入するためには、福祉との連携が必要です。その後避妊去勢をすすめるためには保健所や地域との連携が必要となってくると思います。

多頭飼育・過剰繁殖の問題を解決するには、ボトルネックとなっている、動物系の支援者、社会福祉系の支援者、保健所、町内会などの関係者間の連携を進める必要があります。

そこで、認定NPO法人人と動物の共生センターでは、関係機関との連携を進められる対話の場づくりを目指して、各機関とのコミュニケーションを進めています。まだ具体的な事業とはなっていませんが、各機関から情報が寄せられるようになっており、手ごたえを感じています。

今後は、実際に各機関から寄せられた相談について、実地で解決に当たると同時に、事例を記録しまとめることで、多機関連携の必要性についての社会的認知を拡げるとともに、多機関連携と多頭飼育・過剰

繁殖問題解決のノウハウを蓄積していきたいと考えています。活動については随時報告させていただきます