この番組が始まった頃は子猫だったくろちゃんも生後半年となり、不妊去勢手術する頃合いです。
今回は猫ちゃんの不妊去勢手術についてお話いたします。

【不妊手術・去勢手術とは?】

◆不妊手術
  メスの卵巣・子宮を摘出する手術です。
  おへそ近くの皮膚・腹部筋肉を切開し、腹腔内から卵巣と子宮を摘出します。
   ※術式、使用する糸は獣医師によって異なります。卵巣のみ摘出する場合もあります。

◆去勢手術
  オスの精巣を摘出する手術です。
  陰嚢の皮膚を切開し、精巣を摘出します。
   ※術式、使用する糸は獣医師によって異なります。

【猫の性成熟と発情】

◆メス
季節繁殖動物といって、日照時間が14時間を超えると発情期に入ります。春先や夏にピークを迎えますが、繁華街など明るいところにいる子は年中発情が来てしまう子もいます。初回発情は生後6ヵ月~10ヶ月齢頃です。交尾排卵動物といって、発情中の交尾によって排卵します。交尾がなければ発情は7日~10日程度で落ち着き、2~3週間くらいの感覚で繰り返します。発情行動としては、普段より大きな声で鳴く、落ち着きがなくなる、頭を擦りつけたり仰向けにゴロンとなりくねくねする、お尻を高く持ち上げる姿勢、かがんで後ろ足を足踏みするなどです。
  
◆オス
メスと異なり、発情期というものはオスにはありません。発情したメス猫の声やフェロモンに反応して発情します。性成熟は生後3ヶ月頃から始まり、6ヵ月齢には精巣が発達します。交尾が可能になるのは9ヶ月齢頃からです。発情行動しては、普段より大きな声で鳴く、落ち着きがなくなる、発情中のメス猫の方に行くために外に出たがる、尿スプレー行動、攻撃的になるなどです。

 【手術のメリット・デメリット】

 

◆メリット
望まれない交配による妊娠の防止や、発情すると攻撃的になってしまうので、不妊去勢することによって問題行動が抑制されます。攻撃的にならなければケンカ、事故、感染症のリスクが減少し、寿命の延長にもつながります。また、発情がずっと続くことで性的なストレスもあると思うので、不妊去勢することでストレスが減少するのではないかと思います。
・メスの場合、入選選手の発生率が減少し、卵巣・子宮の病気予防になります。
・オスの場合、精巣の病気予防、尿臭軽減、スプレー行動の抑制になります。
  
◆デメリット
手術を行う際に全身麻酔をするので、麻酔・手術のリスクがあります。よく言われるところでは手術をすると太りやすくなる、その結果糖尿病のリスクが上がることがありますが、術後用のごはんやダイエット用のごはんで防ぐことができます。

【手術はいつするのが良い?】

国際猫医学会のガイドラインでは不妊・去勢手術は必ず推奨とされています。また、4ヶ月齢までに不妊・去勢手術を推奨しています。メスの場合は6ヵ月齢までに不妊手術をすることで乳腺腫瘍の発生率が減少します。しかし、実際は生後16週頃に混合ワクチンを接種するため、その1ヶ月後に不妊・去勢手術を行うことが多いです。ワクチンを打った後には体内で免疫反応が起こって抗体が作られますから、ワクチン後に全身麻酔をかける手術は推奨されません。

野良猫のTNR活動では動物病院によりさまざまですが、生後8週頃(体重800g~1000g以上)より不妊・去勢手術が可能です。人馴れしている子ならいいのですが、人馴れしていない子が多いので、怖い思いをするのは1回で全部済ませてしまうように、捕獲したその日に手術とワクチンを同時にやることは実際に多いです。

【不妊?避妊?】

避妊は、妊娠を避ける。不妊は妊娠しない、妊娠不可能。
避妊は、卵巣・子宮を摘出しなくてもホルモンのお薬などを埋め込む手術もあります。今回は、卵巣・子宮を摘出する手術のお話なので、妊娠させないため、あえて「不妊去勢手術」としました。ホルモンのお薬を埋め込む手術は、子宮の病気のリスクがあるので基本的には推奨しません。

【まとめ】

オスもメスも不妊去勢手術はした方が良いです。特に野外に出る子は必須です。
時期は早期手術も推奨されるようになりましたが、実際にはワクチンなどとの兼ね合いがあるので、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。

【次回】

2022年2月23日(水)夜9時~ 日本全国ネコ会議 VOL.4  石森信雄さん(東京都練馬区)&久野幸裕さん(愛知県大府市)