2021年6月より、「人と動物の共生大学」のコンテンツとしてご視聴いただいているネコ番組、「水9のネコ VOL.2」のレポートを報告します

6月23日に開催した第1回水9のネコではレポートに思いが至らず、ご報告できておりませんでしたが、伊藤先生がMIMI動物病院のスタッフの皆さんと新生児から育てた、子猫のクロちゃん育児日記をご紹介いただきました。その中で新生児の死因の原因の1つが「感染症」であることを学びました。視聴者の皆さんからも専門的でない、家庭でできる消毒について知りたいというコメントが多く寄せられました。

今回は、その「感染症」をなるべく広げないために「消毒」について学びましょう。

【迎え入れ時】

できれば子猫をお迎えする2週間前にワクチン接種を行うと良いです。

お迎え前が難しい場合、迎え入れてすぐにワクチン接種を行いましょう。

パルボウイルスなどの潜伏期間のことを考慮して2週間ほど隔離期間を設けたほうが良いです。

隔離をしていても、人を介して間接的に感染させてしまうこともあるので、元気な子に感染させないためにも掃除・消毒を行いましょう。

【病原体はどこからやってくる?】

新しくお迎えした子自身が病原体を持っている可能性があります。

その子猫自身だけでなく、捕獲した際に利用した捕獲機・キャリー・タオル、移動する際に利用した車、捕獲した人の手、靴、衣類などに付着している可能性があり、動物同士の感染だけでなく、人を介して感染してしまうことがあるので注意してください。

【掃除の順番】

感染症を広げないために掃除の順番はとても重要です。

病原体を持っている子のお世話をした後に、健康な子のお世話をしてしまうと、健康な子に感染させてしまう可能性があるためです。

そのため、感染リスクの少ない子からお世話をすると良いです。

 A健康な猫

 Bわからない猫(今日入ったなど)

 C症状のある猫

 D明らかな感染症を持った猫

【洗浄と消毒】

◆物理的洗浄

 ・掃除や洗浄をして、目に見える汚れを除去すること。

 ・病原体を広げないように拭き取ることがポイント。

 ・有機物が残っていると、消毒の効果が激減してしまう。

 

◆科学的洗浄

 ・消毒薬を使って目的の病原体を減らすこと。

 ・目的の病原体に効く消毒薬の選択、濃度、接触時間を守ることがポイント。

 ・消毒薬を使えば何でも綺麗になるわけではないので、あらかじめ有機物を取り除いておくことが大事。

【お掃除のポイント】

 ・健康な便が床に落ちていた場合、上からつまむようにして取ります。複数落ちている場合も同様に上からつまんで取ります。

 ・緩い便が床に落ちていた場合、チリ紙などを使い、周りから中心に向かってつまむようにして取ります。この時、周りに広がらないように気を付けます。

 ・猫トイレの中に下痢便がある場合は、猫砂をすべて取り換えたほうが良いです。

 ・少量の量の場合には、ティッシュやチリ紙、大量な場合はペットシーツなどで吸わせて取ると良いです。

【代表的な消毒薬】

◆消毒用エタノール

 ・用途:人の手や、ドアノブなど錆びない器具の消毒

 ・濃度:76.9〜81.4vol%エタノールを原液のまま使用

 ・接触:刷り込み時間は最低15秒、カリシウイルスの疑いがある子を触った場合は30秒以上

 ・有効成分:エチルアルコール

 ・注意:引火性があるため火気厳禁。

     ゴム製品・合成樹脂など変性する可能性あり。

     濃度が濃すぎても薄すぎてもダメ。

◆次亜塩素酸ナトリウム(ハイター※成分表示に界面活性剤などを含まないもの)

 ・用途:衣服や食器などの消毒

 ・濃度:衣類や食器の場合、6%次亜塩素酸ナトリウムを0.02%に希釈して使用

 ・接触:5分以上浸漬し、その後水洗い

 ・有効成分:6%次亜塩素酸ナトリウム

 ・毒性:吸引すると危険、手荒れする。(ゴーグル・マスク・手袋を着用)

 ・注意:汚れが残っていると効果が落ちる。

     金属・繊維などが腐食してしまう。

     高温で効果が落ちる。(20℃くらいまでなら大丈夫)

     塩素臭が強い。

     製品によって次亜塩素酸ナトリウムの濃度が異なる。

 ・補足:界面活性剤の入っていないもののほうが良い。

◆ペルオキソー硫酸水素カリウム(ビルコン※ネットで買えます)

 ・用途:靴、床掃除、錆びない器具(捕獲器やキャリーやトイレなど)

 ・濃度:100倍希釈して使用

 ・接触:1分以上接触し、その後拭き取る

 ・有効成分:ペルオキソー硫酸水素カリウム → 次亜塩素酸ナトリウム

 ・毒性:吸引すると危険、手荒れする。(ゴーグル・マスク・手袋を着用)

 ・注意:金属・繊維などが腐食してしまう。

     高温で効果が落ちる。

     食器など口に入れるものには使わない。

 ・補足:水と反応することで次亜塩素酸ナトリウムが生成される。

【ここで算数のお勉強】

問題1.ハイター6%を使って0.1%のハイターを1200ml作る場合、ハイターは何ml必要でしょうか。

 �@希釈前の濃度÷希釈後の濃度=希釈倍数

  → 6%÷0.1%=60倍希釈

 �A希釈後の量÷希釈倍数=必要なハイターの量

  →1200ml÷60倍希釈=20ml

 �B希釈後の量ー必要なハイターの量=必要な水の量

  →1200mlー20ml=1180ml

問題2.ビルコン100倍希釈液を500ml作る場合、ビルコンは何g必要でしょうか。

 �@必要なビルコンの量=希釈後の量÷希釈濃度

  → 500ml÷100倍=5g

 ★ポイント★

 ・液体の場合:1mlを100mlまで薄めたら100倍希釈

 ・固形の場合:1gを100mlに溶かしたら100倍希釈

【消毒ができていない理由】

消毒薬を使ったら必ず消毒できるとは限りません。消毒ができていない理由にはどんなことがあるのか見ていきましょう。

 ・消毒薬の選択が間違っている。

 ・消毒薬の濃度が間違っている。(濃すぎる、薄すぎる)

 ・接触時間が足りない。

 ・有機物を除去できていない。

 ・塩素系を高温のお湯で希釈するなど使い方を間違えている。

 ・乾燥できていない。

【まとめ】

有機物が残っていると消毒の効果が減弱してしまうので、落とせる汚れは落とすことが大切です。

用途によって濃度や接触時間が異なりますので、目的によって使い分けてください。

クロちゃんの成長についても今後お話していきたいと思います。

【お知らせ】

 ・09/29(水)21:00〜 日本全国猫会議 vol2 愛知県NPO法人ファミーユ&福岡県ライフリレー博多ねこ

 ・11/10(水)21:00〜 水9のネコ