【どうぶつ愛護オンラインシンポジウムに関する情報公開】FB投稿より事後に転載
9月26日に代表の奥田が登壇する、どうぶつ愛護オンラインシンポジウム( https://doubutsuaigo.net/)に関しまして、9月18日付けで、塩村文夏参議院議員より、参議院議長に対し質問主意書が提出されております。奥田の登壇に関連した質問であったことから、団体としても透明性の確保・情報公開の必要性を感じ、お知らせするところでございます。
登壇の後に「どうなっているんだ?」と指摘を受けるよりも、先に、情報公開をさせていただきたいという思いから、本投稿をさせていただいています。是非、皆さまからの率直なご意見も賜りたいと思っておりますので、忌憚のない叱咤激励をいただけますと幸いです。
質問主意書に関しては、以下のリンクをご覧ください。
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質問の一部を抜粋しますと
「本シンポジウムにおいて、業界団体側と利害関係を有しており、動物愛護や動物福祉を求める国民の声を結果として否定しているとの疑念が上がっている団体や人物に(中略)講演を依頼することは、極めて慎重であるべきと考える。」
「「鳥の目から見る人と動物の共生―虫の目に偏らないために―」という講演の意味を明らかにされたい。」
とございます。
直接的な記載はございませんが、文脈から考えまして、疑念が上がっている人物とは、奥田のことを指すと考えられます。業界団体と近く、コネクションがある人間は、登壇者の中では奥田しかいないと認識しています。演題も奥田の演題名です。
まず、直接的な回答になりますが、環境省に提出しました講演要旨は以下の通りです。
【講演概要】
動物愛護の活動は、目の前の動物が「かわいそう」な状態でなくしたい、という情緒的な動機づけに端を発して、行われていることが多いだろう。あるいは「殺処分をなくしたい」「ペット産業をなくしたい」といった強い感情から突き動かされているかもしれない。そうした、動物を守りたいという強い感情は、時に、動物以外のものを見えなくし、視野を狭めてしまう。「かわいそうだから」という感覚から、避妊去勢していない野良猫に餌を与え続けて、地域の問題に発展させてしまうことや、「今、生きていれば…」という思いから、十分な設備や人員のない中で過剰な保護を行ってしまうこともあるだろう。そうした行為は、「動物を守りたい」という気持ちとは裏腹に、動物を傷つけることもある。人と動物の共生の問題を、社会問題として捉えるならば、動物だけを見るのではなく、社会を捉え、広い視野で、人と動物の関わり合いを見る、鳥の目を持つ必要があるだろう。
登壇の経緯としましては、2020年8月下旬に、環境省からご連絡をいただき、登壇を快諾しております。本登壇に関して、業界団体やペットショップ等に連絡を取り合うなどのことは全く行っていません。
なぜ、奥田が、こうした疑念が上がっている人物として捉えられているかと申しますと、直接的には、犬猫適正飼養協議会が発行を予定している動物取扱業のための適正飼養ガイドブック(未発行)の監修を引き受けている関係からと考えています。こちらのガイドブックは、動物取扱業の適正化のために発行されるものですが、法律の正式な決定を待ってから発行することになっています。
2019年10月に、会長の石山氏が基準案の提案を動物愛護審議会でプレゼンした際に、その基準が動物福祉にかなうものではなかったため、多くの批判を受けました。奥田は、その後に監修作業を行っており(監修依頼の初コンタクトは10月前半)、議論の結果として法律が決まってから内容をガイドブックに反映させということで決定しています。
その後、2020年1月に開催された、犬猫適正飼養協議会の主催するシンポジウムにパネラーとして登壇する機会があり、監修も含めて、報酬も受け取っています。報酬の額については、一般企業からの講演の依頼と同等程度のものです。そうした意味で、利害関係を有するということはまさにその通りです。
また、同時期から現在にかけて、奥田を中心として、当団体において、2つの調査を実施しています。
(調査①)
獣医師を対象とした、数値規制に関するアンケート調査報告 -動物福祉と事業経営を両立するための提言を合わせて-
(調査②)
【数値基準】犬猫保護団体へアンケート調査を実施。52%が数値規制に期待も、漏れ出す犬猫レスキューの余裕はなし。ペットショップ等による譲渡促進の必要性が明白に。
これらの内容に関しては、生体販売を中心とするペット業界の改善を提言するものとして発表しており、実際にペットショップ等への働きかけのために行っていて、ペットショップ等もそれに呼応して、譲渡の促進に関しての具体的な活動につなげていくことを相談していこうという流れになっています。
しかしながら、調査結果について、必ずしも数値規制をより厳しくするための論拠になっておらず、むしろ数値規制を緩和する論拠となる結果も出ている(保護団体の一部では数値基準を満たせないなど)ことから、その点について、SNS等において批判的に見る方もいらっしゃったことは認識しております。
また、これらの調査に関して、業界団体等から一切の寄付や報酬を受け取っておりません。当団体の自主事業として実施しております。
さて、そもそも、人と動物の共生センターにおいて、ペット産業のCSRの推進を行っていこうということは2015年ごろから開始しています。その頃は、団体内、職員内でもCSRとは何か?という部分についてもコミュニケーションが取れておらず、「ペット業界とつるむなんてダメだ!」という意見もございました。
しかし、ペット産業の問題を根本的に解決するには、ペット産業の商習慣そのものをバージョンアップする必要があると考えております。そのため、外部からの圧力だけでなく、内側から適切な提案ができ、協働できる存在が必要ではないかという思いがあり、喧々諤々の議論を経ながら、継続してペット産業のCSRの推進に取り組んでまいりました。
ペット産業の変化は、法律の改正や、強い圧力をかける外部からの批判は非常に重要です。その上で、内部から変えていく、内部から変えようとしている人を応援する存在も必要だろうと考えていました。奥田の行動学の専門家としての知識、獣医師としての知識、それらに伴う人脈は、外部からの圧力をかける方に使うのではなく、内部に入り、提案し、改善を促す役にこそ使えるのではないかと考え、そのように動いてまいりました。
そのため、ペット産業に対しては、批判ではなく提案で臨むことを前提とし、各種シンポジウムや、ペット産業CSR白書(2018)、各種調査報告においても、ペット産業がどう変わればよいのかという提案を行っています。
ただ、それは提案をすればよいだけではありません。コネクションを作り、実際に経営判断に活かしてもらえる情報にしていかなければなりません。それを実現するために、重んじてきている方針が、ペット産業と対話をするということです。一方的に批判をするのではなく、話を聴き、相手のニーズを把握し、その上で、相手も納得できる提案をするということです。
その繰り返し、積み重ねによって、現在では、全国に店舗を持つペットショップチェーン3社と定期的に連絡を取り合い、相談しながら行動学面やCSR面での助言を行うことができるようになっています。尚、各社から、しつけ教室の紹介、しつけ相談システムに関する助言、ペット防災に関する寄付募集といった側面で、金銭のやり取りのある取引がございますのでこれも利害関係の一つになるかと思います。
確かに、当団体や、奥田個人は、ペット産業との距離は近いです。この世界がペット産業と市民という2項対立の世界であれば、ペット産業側に属する存在といえるでしょう。そもそも小動物臨床獣医師はペット産業に属する人間といえます。
しかし、こうしたペット産業と市民の二項対立、分断が未来を創るとは思えません。必要なのは、ペット産業が市民の声を聴く事であり、同時に市民側もペット産業の意見を聴き、より良い案を共に作り出していくことではないかと思います。
もちろん、現実的には、対話の場を持ち、市民の声をペット産業が経営に反映するというプロセスは困難を伴います。簡単にできることではないでしょう。だからこそ、積み重ねが必要であり、ペット産業から信頼されるNPO・獣医師としての活動を積み上げているという面があります。
そして、批判も重要です。市民の監視の目を企業やNPOに向けることは、適正な市民社会を構築するためには必要不可欠です。そして対話も市民社会を成立させるためのもう一つのカギだと思います。批判と対話を両輪で行うことでこそ、よりよい社会が実現すると考えます。
そのような思いの元、これまでのペット産業のCSRの推進を活動として取り組んでまいりましたし、今後も取り組んでまいりたいと考えております。こうした表明が、透明性の確保に資するかどうか、それも外部からのご意見を頂戴していかなければならないところと考えますが、可能な限り、ご説明申し上げるつもりです。
疑念があれば、是非、facebookへの書き込みや、メール(info@tomo-iki.jp)でお願いいたします。
今回、この件を奥田からスタッフの鈴木に相談したところ、「CSRに関しては発信が少ない」と指摘を受けました。それは、そうだったかもしれないと反省しましたし、きちんと途切れなく、社会に発信を続けていくということは必要だとも感じました。
今回、このような機会で、長文ではありますが、投稿させていただいたのはいい機会だったかなと思っております。まだまだ言葉足らずかと思いますが、皆さまの叱咤激励を受けて、活動に邁進していきたいと考えております。
NPO法人人と動物の共生センター 理事長 奥田順之