概要

NPO法人人と動物の共生センター(当法人)では、誰もが分け隔てなく人と動物の共生について学ぶことのできるオンライン市民大学「人と動物の共生大学」を運営しております。

2023年9月9日に開催を予定しておりました、『問題行動解決塾 〜イルカから犬へ 行動の原理を知れば、トレーニングは種を超える〜』につきまして、イルカの飼育の倫理性に関して多数のご意見を頂戴しました。これを受けて、講師の先生と協議した結果、講師の先生より今回のセミナー講師については辞退されたいとのお申し出をいただき、講座の中止を決定し、代替の講師による内容を変更してのセミナーを開催することといたしました。

楽しみにされていた多くの皆様のご期待を裏切る結果となり、心よりお詫び申し上げます。

当団体の見解

イルカの飼育の倫理性についての問題については、当団体において取り扱い、啓発を行うべきテーマであると考えています。にも拘わらず、セミナーの告知において、イルカの飼育に関して肯定的あるいは推進的であると捉えられかねない表現になっていたことは問題であり、大いに反省すべき点であると考えております。今後のセミナー実施に関しても、本来の意図とは別の意図ととらえられかねない表現を行わないように、役員・職員・委託事業者に周知いたします。

一方で、本セミナーの本来の趣旨は、学習理論に基づく、適切な人と動物のかかわり方について探求するものであり、セミナーの企画は意義あるものであったと考えております。講師の先生は、元ドルフィントレーナーであり、現在イルカの飼育に直接的に関与しているわけではありません。また、パブロフやスキナーの実験があって今の学習理論が体系化されてきたように、過去のイルカの飼育から、トレーニングの技術の進歩が起こってきたことは紛れもない事実であり、現在のイルカの飼育に関して倫理的な問題があったとしても、イルカの飼育から得られてきた知見そのものに罪があるわけではありません。本セミナーでは、イルカの飼育から得られた知見について、他の動物種(特に犬)に応用しようとするものであり、その内容に問題があったとは考えておりません。

このような理由から、当団体としては、本セミナーの本来の趣旨が、倫理的に問題であったとは考えておらず、あくまでも、広報段階で本来の意図とは別の意図ととらえられかねない表現を行ったことに当団体の落ち度と問題があったと考えています。

当団体では、このような考えから、イルカの倫理性に関しては、本セミナーとは別の機会に議論する形とし、本セミナーでは元々の企画内容で実施したいと考えておりました。しかし、講師の先生との協議の結果、登壇を辞退したいというお申し出をいただきました。多くの期待されていた皆様の期待を裏切る結果となったことについて、責任を感じるとともに、大変残念に思っています。楽しみにしていただいた多くの皆様に、心よりお詫び申し上げます。

当団体では、人と動物の共生大学をはじめとして、対話的に物事を進めていくことを大切にしています。例えばペット産業の問題に関しても、一方的にペット産業を悪であると決めつけてしまうことは、対話と、対話による進化の道を閉ざしてしまうと考えています。

今回、当団体に寄せられた意見の多くは、冷静で啓発的な内容であり、当団体としても学びにつながる内容でした。しかしながら、一部のコメントは、イルカの飼育に関わる人の考え方や見解を決めつけ、断罪するような表現も見受けられました。市民活動について冷静な批判が行われることは健全な社会づくりに必要なことであると考える一方、過激な表現や相手の立場や考えを決めつけた強い批判により、市民活動が委縮することは、健全な自治を行える社会から後退するものであると考えます。

今回の件を学びとして、今後より一層、対話とコミュニケーションに力を入れ、関わる多くの皆様と共に、人と動物の共生を実現する社会の実現に向けて、努力していきます。

今後の対応について

  • 9/9のセミナーについては、講師と内容を差し替えて実施する。
  • これまでの経緯についてHP・SNSにて報告を行うとともに、中止・差し替えになったことについての謝罪を実施する。
  • 9/9のセミナー実施前に経緯の説明と共に、中止・差し替えになったことについての謝罪を実施する。
  • イルカの飼育の倫理性に関する問題については、追って、動物幸福論で取り扱い、セミナーとして開催する。

事案の時系列

日時事項
2023年8月8日Facebookにて、当該イベントページ公開
https://www.facebook.com/events/6590094514420077
9日メールフォームおよびFacebookコメントにて、イルカの捕獲・飼育等に関する倫理性に関して1件目のご指摘をいただく。
この時点で、理事長奥田順之がメールの内容について把握。返信の検討を開始。
11日問題行動解決塾企画チームに情報を共有し意見を仰ぐとともに、理事長奥田順之と問題行動解決塾担当者にて、コメントとメールへの返信に限らない対応に関する協議をスタート。
12日講師に本件の経緯に関する情報共有を実施。
本特設ページを開設。
今後対応を行っていく旨を、SNSにて報告。
13日ダイレクトメッセージ等を通じで、本セミナーを中止せずに、実施してほしいという旨の連絡を複数受ける。
16日講師と理事長・企画担当者にてオンラインにて打ち合わせを実施。
イルカの問題については、当団体においても今回のセミナーとは別に取り扱っていくべきテーマであると伝える。今回のセミナーはあくまでも学習理論に関するテーマであり、楽しみにしている方もいるため、当初の通り実施いただきたいものの、講師の先生に迷惑のかからないことが大前提であるため、講師の先生の判断を仰ぎたい旨を伝え、返答をいただくこととして打ち合わせを終了した。
17日講師の先生から返答があり、今回のセミナー講師はご辞退されることとなった。
21日企画チームによるミーティングを実施。9/9に関しては中止ではなく、講師・内容差し替えの形での実施を行うことを決定する。
22日講師を、当団体理事長(獣医行動診療科認定医)奥田順之として実施することを決定。
24日これまでの経緯の説明と、講座差し替えの案内を実施。

いただいたご意見(抜粋)

そもそもイルカは犬とは違い、もともとは海で自由に暮らしていた「野生動物」です。それなのに、水族館のイルカショーのイルカはなぜ人間の言うことを聞くのでしょうか?それは、人間がイルカショー用のイルカをつかまえて調教するために、無理やり海で生け捕りにすることに始まります。まずここが犬とイルカでは大きく異なっています。そして、人間の娯楽のために野生動物を捕獲する理不尽さを、海外や日本国内から非難されないために、恐らくはイルカは食文化であると誤認や勘違いさせたいがために、生け捕りにしなかったイルカは皆殺しにし、太地町の漁業スーパーでイルカ肉として販売し食べられています。

イルカのトレーナーは、水族館で見世物にされるイルカを捕獲するために太地町でイルカが毎年何百も殺されることを承知で、捕獲されたイルカをイルカにとってトイレのような狭さの水族館で監禁地獄飼育することを良しとしている残酷なイルカトレーナーが、「共生」の場面で登場するのは不適切です。

共生とは、どうぶつを人間の生活や娯楽のために使用したり適応させることを言うのでしょうか?

それは「種差別・どうぶつ利用・搾取」を肯定しているからじゃないでしょうか?

どうぶつは「どうぶつとしての全ての尊厳および在り方」を尊重されるべきで、そもそもどうぶつ達は人間のために存在しているのではなく、トレーニングは人間社会のために行われるものです。今存在してしまっている犬についてのみ仕方なく必要とされるだけですが、「問題行動」というのも、「人間にとって問題」なだけであり、どうぶつにはその行動を取る理由があるわけです。

「問題」と定義するのも間違っています。

犬とイルカを同じ土俵に置いて話されるのは違うのでは無いかと思います。

ディンゴやオオカミなどの野生のイヌ科の生き物と、野生のイルカということであれば解りますが、ここで言われているイヌとは人間によって造られた愛玩動物のことですよね? 

イルカなど、野生の生き物との共生とは尊厳ではないでしょうか。

その生き物の生息環境や習性を学び、私たち人間が脅かしてしまったところがあればそこは私たちが責任を持って修正するのみ。

トレーニングなど人間の介入があってはならないと思っております。

それは共生ではなく支配の仕方、手懐け方、という言い方が適切かと思います。

ペットの犬は、災害避難時に言うことを聞くようにトレーニングする必要がありますが、イルカショーのイルカは、残酷な方法で捕獲され拉致監禁、強制労働させられる奴隷のようなものなので、まるで立場が違います。

イルカは、芸をしないと餌がもらえないから仕方なく芸をするのです。

本ページ設置の目的

本ページでは、いただいたご意見の内容をご紹介するとともに、当法人の対応と見解についてご説明させていただくとともに、ご意見を頂戴することで、情報の透明性を高め、人と動物が共生できる社会づくりに資する当法人の適切な運営を行うことを目的に設置しています。