4回目のゲストには行政職員で地域猫活動アドバイザーの石森信雄さん(東京都練馬区)、久野幸裕さん(愛知県大府市)にご参加いただきました。
行政とボランティアがどう協働すれば、より良い活動が実現するのか。行政からの視点を学びます。

◆東京都練馬区職員の石森信雄さん


 【地域猫とは?】
 単なる「飼い主のいない猫」ではなく、「去勢不妊手術をした飼い主のいない猫」でもありません。
 「地域住民によって適正管理され、地域の中で住民と共生している飼い主のいない猫」です。
 地域猫の「地域」は「地域コミュニティ」の「地域」なので、地域のみんなから嫌われることなく、地域住民の見守りの中で安心して暮らしている猫ちゃんです。

 【なぜノラ猫と地域住民は共生できない?】
 1.猫側の共生阻害要因
 大繁殖、繁殖期の不快な鳴き声、ふん尿被害、庭木がダメになったことなどの生活環境被害によるもの。

 2.人間側の共生阻害要因
 迷惑動物、エサやりさえ止めればいい、税金払っているんだから役所が解決しろ、
 こんなにかわいい動物を嫌うなんて、ちょっとのフンで文句をつけるなんて、
 といった住民意識によるもの。

 【地域猫活動の流れ】
 町内関係者には「ノラ猫で困っている人がいるので、被害対策をします。どうぞご理解を!」とお伝えする。
 被害者には「ノラ猫を減らしましょう!被害を減らしましょう!」とお伝えする。
 エサやりさんには「エサやりいつもありがとう!これ以上不幸な命が生まれないように去勢不妊手術しませんか?」とお伝えする。

 活動に対してみんなが無理のない範囲で協力することで、イライラ感を徐々に減らし、
 猫の魅力に気付いて意外と可愛いかもと思うようになったり、マナーは守るように協力していただけるようになります。
 ふと気づけばノラ猫の存在を自然に受け入れている地域社会ができているようになります。

 【まとめ】
 地域猫活動は究極の動物愛護活動です。
 猫をめぐるイライラ、トラブルがなくなり、猫をめぐるマナーが浸透していき、
 猫が好きな住民が増えていき、猫を受け入れる温かい地域社会が出来上がります。
 猫に対する人の心を変えていき、人と猫との関係を根本から改善する社会貢献活動

◆愛知県大府市職員の久野幸裕さん


 【大府市猫の死体処理数の推移】
 交通事故等で亡くなる猫が平成23年度に比べて平成30年度は210匹も処理数が減りました。
 行政職員なのでお金に換算するのですが、処理金額としては100万円以上も削減できております。

 【地域猫活動した結果】
 猫の鳴き声がなくなった、猫の糞尿がされなくなった、猫によるごみあさりが無くなったなどの「苦情がなくなった」、
 地域で知らなかった人とあいさつできる、カラスの被害を皆で無くした、子供たちは挨拶ができる、隣のおばあちゃんは元気だ!などの「地域力・民度が高くなった」ということもありますが、
 一番は地域とボランティアと役所の連携(協働)ができたということだと思います。

 【大府の地域猫活動の基本】
 行政は動物愛護のために税金をあまり使えません。
 なので「環境美化活動」として補助・支援をしています。
 行政職員が公共性を担保することで地域猫活動ができています。
 行政の方針であることがわかるように行政のチラシも用意しています。
 そこには、行政の連絡先とボランティアの連絡先の両方を記載しています。

 【セミナーについて】
 愛知県では毎年セミナーを行っています。
 石森さんとも昨年セミナーでご一緒しています。
 今年は愛知県内の17のボランティア団体が一緒になって情報交換やセミナーなどを行います。

◆質問コーナー


 Q.セミナーで石森さんは猫を好きでも嫌いでもないと拝聴しました。他の自治体で地域猫活動をされている方も犬派という方がいらっしゃいました。
  久野さんは猫好きが発端で関わられていらっしゃるのでしょうか。
 A.嫌いでした。(久野さん)

 Q.ノラ猫に対してお怒りが凄い人には、どう接してますか?
 A.一時対応はボランティアさんにお願いするのですが、どうにもこうにもダメで、、、という場合には行きました。
  最終防衛ラインとして役所担当が行くと、怒鳴り散らされることはないんですよね。
  特効薬は特にありません。ひたすら話を聞きます。
  町内回覧や個別訪問などありとあらゆる手段で「こういうことをやっていて、こういうことに気を付けてほしい、困っていることがあったら言ってほしい」と伝えて、
  情報共有などやることを全部やっているので「聞いてない・知らない」とならないので、大抵おさまりますね。
  ボランティアさんは町のためにやっていますし、必ずあなたのためにもなりますから、見守っててもらえませんか?という姿勢は崩さなかったです。(石森さん)

 Q.お二人のような革新的な職員なら助かるのですが、通常の行政職員に地域猫活動の理解を得るためにはどうしたらいいでしょうか?
 A.行政職員がこれやろう!やりたいなと思うには、苦情数が減るということがトリガーとなると思います。(久野さん)
 A.誰だって仕事をしていれば具体的な利益がないとなかなか新しいことに踏み出すリスクを取らない人もいるので、
  私の実体験でいえば、担当1人で猫だけの苦情を400件取ってました。それとは別に犬の苦情もありますからね。
  かなりの時間を苦情を聞くことにとられてしまったので「何が何でも苦情を減らしてやる!」と思いました。
  逆に言ったら、「これをやったら苦情が減るよ」というのが一番わかりやすいです。
  しかも、自分が苦情対応せずに地域のボランティアさんがやってくれるから、こっち(行政)は支給だけでいいよって言うと喜びます。

(石森さん)

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